近藤佑子

キャリア・ハッカーズ 新卒・個人事業主の何とかする記    第1回 キャリアをハックするとは 

(2013/5/20)

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 ワンチャン掴むつもりが個人事業主へ

 京大に入ればお金持ちになれると思っていた。
 振り返ってみると、幼少の頃からそんなに家にお金もなく、田舎で何もなく、人と交流する経験も乏しかった私は、お勉強だけは田舎基準でそこそこできたので、京大に入ればなんとかなると思っていた。その結果、塾にも行かず、浪人はせども予備校は特待生で京大に入ることができ、入学後に奨学金をもらい、寮に入れたので、非常にコスパよく進学することができた。お金がない人がワンチャン掴むには京大か東大を目指すのがよい、というのは私の持論である。ただ、自由で面白すぎる大学生活は、私からエリートサラリーマンとして生きる選択肢を奪ってしまった。
 大学院に進学し、研究者の道もほんのちょっとだけ検討し、もちろん大企業・中小企業を含む就活をした。卒業してもなお正社員での行き先が決まらなかったため、まずは働いてみようとバイトを探したのだけど、ご縁があった仕事はフリーランス契約だったために、どうせ確定申告がいるならと個人事業主の看板を出してみた。アプリやウェブサービスの運営のお手伝いなど、実質フリーター待遇なのだけど、最近ぼちぼ書き物の仕事を頼まれるようにもなってきた。自由で面白いこともあれば、自分の怠惰さに悔やむこともある。お金持ちとは程遠い。目指すは正社員だが、最悪なんとか死なずには生きていけるだろうという感触はある。

就活をハックしてる感じ

 ちょうど1年前、私は就職活動に悩んでインターネットを使った自己PRサイト(注1)を制作した。これは元々誕生日にインターネットを使って面白いことをしたいという思いがあったのと、面接でアピールする実績を作りたいと思って制作したもので、企画や制作には、よく遊びに行っていたシェアハウスにいるエンジニアの友人達に協力してもらった。これは非常に反響が大きく、多くの企業、採用担当者からの反応があり、思ってもみない展開になった。
 その後、採用担当者からのエントリーを受け付ける逆エントリーフォーム、自力でまとめサイトなどを作成したが、インターネットを使って他の人がやっていないことをすること(創造性)、プロセスの透明化、手法のオープンソース化などは、エンジニアとしてはしょぼしょぼな私でも、ハッカーに通じるところがあったのではないかと思う。『ハクティビズムとは何か ハッカーと社会運動』(塚越健司、2012年)によると、ハックには「建設的かつ合理的なシステムの改善」と「誰も思いつかないような改善という名の創造的行為」の二側面があると述べられている。ハッカーには「ハッカー倫理」と呼ばれる暗黒のルールがあり、それは徹底とした情報の自由と情報の共有という信念であるという。自分の行動が良かったのか悪かったのか、是非に迷って苦しんでいた時に支えてくれた友人は「就活をハックしてる感じ、相当coolだった」と言ってくれた。
 さて、1年も経ってみると「あの経験は結局どうだったのか」とよく聞かれるが、私は「非常に面白い経験をしたのと多くの人に出会った、それ以上のいい事はあまりない。ただこのことは他のどんなデメリットを上回る」と答えている。面白い、というのが最上の価値観になった。

How To Become A ‘CAREER’ Hacker

 さて、本連載のタイトルになっている「キャリア・ハッカーズ」とは、今までに行った就職活動や働き方の実践を「ハッカー」になぞらえ、これからも面白く創造的に生きていきたいという思いを込めた造語だ。また、そうした実践を行う人を応援し、実現しやすい世の中にできたらという思いもある。新しい(?)働き方と言っても、そこにはキラキラした華やかな世界だけではない。そんなにお金も稼げないし社会的に守られない、目指せる人もいない、ガッツリ教育されるわけではないし、だらだらと働かないでいたらその分お腹が空く。でも他に誰もあんまりやっていないということが自分をわくわくさせ、獣道を行くことが希望を作ればいいと思う。正しいと思うことをやっていたらここに行き着いてしまった。そこには批判も絶望もあるかもしれないが……まあ自分で決めたことだからしょーがない。
 新卒で就活うまくいかなくても、貧乏になってもまあ何とかなる、そういった「希望のオープンソース化」をしていきたいと思い、私は今日も言葉を連ねるのだ。

(注1)http://mechayaba.kondoyuko.com

 

近藤佑子(kondoyuko / Yuko Kondo)
1986年岡山県生まれ。京都大学工学部建築学科卒業。東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。学生時代の主な研究分野は近代建築史、シェア居住。在学中より、アート、ITなど様々な分野に関心を持ち、2012年、新卒就活中に制作した自己PRサイトが話題となる。2013年4月、大学院修了と同時に個人事業主として独立。就職活動を継続する傍ら新しい働き方を模索する。

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