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僕はこうやってZINEを作っている、あなたは? #2 コンセプトを考える 

(2023/2/7)

「表現」には、「表」と「現」の二つの「あらわれ」が含まれています。表現が〈あらわすもの〉であるかぎり、自分自身に少しだけ嘘をつくものが出来上がってしまう気がする。だけど表現が〈あらわれるもの〉であるかぎり、それは自分自身に誠実であるような気がします。

ZINEはどんなテーマで何を作ろうと自由ですが、創作の出発点となるテーマやコンセプトは、自分の内側からドロリと〈あらわれる〉ようなものであるといい。たとえクオリティがそこまで優れていなくても、自分の奥深くから滲み出てきた表現には魂が宿り、きっと誰かの魂と共振するはずだと思うんです。

僕が作った2冊のZINEを振り返ってみると、「旅をしたいのにできない!」という掻きむしるような切迫感や、前だけを向いて爆走する社会への危機感、あるいは「生きづらい社会の中でそれでも充実した日々を送りたい!」という切実な欲求が出発点にあって、それをそのままコンセプトに据えました。たぶん、だからこそ、80人以上の方が「共感した」と言ってZINEに寄稿してくれたのだろうし、2000人以上の方が手に取ってくれたんじゃないかと思っています。

自分にとって一番アクチュアルな問題とか、最も素朴な想いを、見て見ぬふりせずに、できるかぎり素直に拾い上げ、形にすること。そしてそれを自分の外側に投じてみるということ。


ただ、企画の構想段階においては、自分の問題意識やコンセプトがひとりよがりで終わってしまうんじゃないか…と不安にかられることがあります。そんなとき、いつでも僕の背中を押してくれるのが、社会学者の見田宗介さんが『社会学入門』に書いたこんな言葉です。

「ほんとうに自分にとって大切な問題を、まっすぐに追求しつづけるということは、それ自体が、どこまでもわくわくとする、充実した年月なのです。ひとりの人間にとって大切な問題は、必ず多くの人間にとって、大切な問題とつながっています。「生きた」問題、アクチュアルな問題を追求して行けば、必ずその生きた問題、アクチュアルな問題に共感してくれる先生たち、友人たち、若い学生たちに恵まれて、そこに〈自由な共同体〉の、輪が広がります」

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”本当に大切な問題”のありかとかたちは人によって実に多種多様で、例えばコンプレックスや、マイノリティの差別や排除、生きることの意味も張り合いも見出せないとか、テロリズムと戦争の根源、環境破壊や生態系、アートやデザインやモードの問題、自分らしく生きるにはどうすればいいか、などなど…。

自分にとってのそれは「本当に楽しく、充実した生を送るにはどうしたらいいか」という大きな問題で、どうしても一つの分野では考えられないから色んな分野の仕切りを越境しながらヨタヨタと考えてる今日この頃。ともかく、自分が人生の全青春をかけても悔いないと思える問題を手放すことなく、どこまでも追求し続ける、そうした仕事であればこそ、きっと誰かの心の深い場所に届くと信じてやっているというわけです。

では、自分の内側から「あらわれる」欲求をコンセプトに据え、作品として成り立たせるためにはどうすればいいのか。その一つの道具として、僕は企画書づくりを大事にしています。とっ散らかっててもいいから、とにかく手を動かしながら思いを具体的にしていく作業です。

というわけで、次回のテーマは「企画書づくり」です。
お楽しみに!

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