【新刊】『脱コルセット:到来した想像』発売です
(2022/3/30)
イ・ミンギョン『脱コルセット:到来した想像』、本日発売です。
『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』『失われた賃金を求めて』に続く、イ・ミンギョンさん3冊目の邦訳出版となります。『私たちにはことばが必要だ』で女性差別に抗うための実用的な提案、『失われた賃金を求めて』では賃金格差の背景を女性の人生を遡って指摘、そして『脱コルセット』では多くの実践者へのインタビューからこの新しい運動の考察を試みています。
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脱コルセットは、2018年頃に韓国で広まったフェミニズムの運動です。「コルセット」は、化粧やハイヒールなど女性に強いられる「着飾り」や、女性らしいふるまいや生き方など女性に求められる「規範的女性性」を表しています。韓国社会が女性に刷り込んできた「ルックス至上主義」や「女性らしさ」への抵抗のために、脱コルセット運動は若い女性たちに急速に浸透したといいます。
さて、本書は脱コルセットをテーマにしていますが、定義の解説や、運動の推奨のみを目的とした内容ではありません。
著者ミンギョンさんは冒頭でこのように語ります。
「韓国で現在進行中のフェミニズムの運動について、そこに込められたメッセージをすばやく読み取り、広められると自負していた私だが、今回は疑問や恐れを抱いたままうろたえてしまった」
脱コルセット運動の中心は10代〜20代前半の世代、10歳ほど年上のミンギョンさんは「理解できなさ」からこの問題への取り組みを始めたのです。
そこでミンギョンさんはまず、SNSで「#脱コルセット認証」のハッシュタグを追いかけ、この世代が置かれている環境を調査、幼い頃にガールズアイドルの台頭、チープコスメの普及が始まり、メイクの低年齢化や同調圧力が日常であることを知りました。その上で自らも脱コルセットを実践、さらに「幼い頃から着飾りへのプレッシャーをより強く、全身に与えられてきた女性たち」に直接会って話を聞くというプロジェクトを始めました。
「脱コルセット運動は見た目というセンシティブなテーマを扱う特性上、ほかのフェミニズム運動よりバッシングが激しく、誤解もされやすい(略)私は、スピーカーではなく通訳者に徹して、脱コルセット運動のメッセージを訳そうとした」
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実際に本書に登場する女性たちの声をいくつかご紹介します。自らの体験やこの運動に到るまでの経緯は、切実なことばがあふれています。
「家から徒歩1分の距離のスーパーに行くときも、ファンデーションを塗ってから出かけました。本当に……なぜだろうと思います」
「私が脱コルセットに対して持っている自分なりの基準は、もし自分がメイクしている時間に男子が勉強しているなら絶対にメイクはしない、ってことです」
「今は、女性の服がすべて人形の服のように見える。人間が着ることを考えて作られた服じゃないような気がするんですよね」
「服がとても好きだから、好きで着るから。当時は(そんな自分の態度を)変えたくなかった(略)でも、いざ出てみると、本当はこうやって今みたいに生きたかったんだなと思います。好き勝手お金を使いまくって死にたいわけじゃなくて、少しずつお金を貯めて生きたかったんだと」
こうして1年ほどかけて100人あまりの女性に会いに出かけ、20人ほどのディープインタビューを行い、脱コルセット実践者の声を記録するとともに、著者自らの服やメイクにまつわる経験、女性運動の系譜や世界中で起きている規範的女性性の圧力などにも目を向けながら、この運動を解釈するまでの長い道のりを描いたのが本書です。
「この運動が、同時代の記憶だけにぼんやり残るものではなく、2018年に起きた厳然たる革命として刻まれる契機になれば、そして脱コルセット運動が終わってから生まれ、また別の共鳴しづらさを抱く女性たちと私たちをつなげる役目になればいい」
そう締めくくられるように、女性運動の文脈の一つとして刻まれることを目指して書き上げた、その気概が伝わってきます。
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たくさんの女性たちの声からなる本書の特徴を活かすべく、日本語訳は前2作の訳者、すんみさん小山内園子さんからの提案で、複数の女性翻訳者が担当することになりました。韓国・日本在住の翻訳者に声をかけ、韓国から生田美保さん、オ・ヨンアさん、木下美絵さん、キム・セヨンさん、朴慶姫さん、日本から小山内園子さん、すんみさん、尹怡景さんの8名が参加してくれました。1年に渡る作業中、ミーティングを重ね、著者の表現や意図を確認しながら日本語にしていきました。
翻訳しながら、脱コルセットについて、また女性らしさや規範的女性性についての気づきが多く生まれ、それぞれのことばで記した翻訳者リレーブログを公開しています。このブログ、そして本書編集後記から、刊行の背景や意図を感じていただけるかと思います。
著者と脱コルセット実践者との長い旅に同行して、一緒に考えを深めていく、そして読み終わった後にはサブタイトルのように「到来した想像」を感じる…そんな読書体験となることを願っております。
なにとぞよろしくお願いいたします。
(宮川)
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