『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』発売しました
(2018/12/13)
イ・ミンギョン著、すんみ/小山内園子訳『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』、本日発売です。
本書は、韓国の女性たちによって企画された、差別問題で苦しむ女性のための日常会話のマニュアル書です。
この本が生まれたきっかけは、2016年にソウルで起きた江南駅女性刺殺事件でした。ただ女性であるという理由で男性に殺害されたこの事件は、本書著者が「それまでと同じように生きることができなくなりました」と語るように韓国女性に大きな衝撃を与え、被害者の追悼運動が一気に広まったといいます。
女性たちが韓国社会に蔓延する暴力から自分たちを守るために立ち上がり、フェミニズムムーブメントが盛り上がりを見せている…ということを聞いたのは、昨年ソウルの書店・出版社を巡るツアーに行ったときのこと。独立系の書店数店でこの本を見かけ、出版界でもフェミニズム関連書が増えていること、この本がその走りとなったということを聞き、日本版刊行を決めたのでした。
さて、本書のスタイル「女性のための日常会話のマニュアル書」というのはちょっとわかりにくいかもしれません。具体的には、前半で女性差別がどのような背景で生まれているか考察し、それに対し女性はどういう態度をとるべきかを提言、後半ではそれをふまえた上で実際に会話する(またはしない)方法を説いています。
特徴的なのは、実際の体験から問題をていねいに読み解き、自分たちのことばでフェミニズムを表していること。ちょっと紹介してみましょう。
私たちは、いま、完全な平等を実現しているのか?
もしそうではないと思うならいまは不平等な状態で、平等になるためには、もっと変わらなければなりません。
(男性には)「『差別はないと主張する自由』がない」ということ。すでに話したように、差別があるかどうかを決めるのはあなたです。(略)男性の地位が以前より下がったと文句をつけたところで、女性が男性と同等な地位になったことにはなりません。
「女性のほうが賢いんだから、男は手のひらで転がしておけばいいんだよ」という言い方も、もちろん女性嫌悪です。女性が与えられている枠が固定観念でこりかたまっているからです。ずっと枠の中にいられれば、女性は過剰にほめられたり守られたりしながら安全に暮らせるでしょう。いいかえれば枠を出ようとしたとたん、安全でなくなるということです。
相手の期待とちがう選択をしたら、私たちはののしられ、ひどいときは殺されてしまうことだってある。「好きだと言ったのに断られた」「俺を無視した」というのが女性を殺す理由になるのは、彼らが女性を自分で選択できる主体として考えていない証拠です。
どうでしょう、女性なら「そういうことか!」と膝を叩きたくなるのでは?
なぜ男性のことばにカチンとするのか差別がなくならないのか、そしてハラスメントや暴力が起き続けているのはなぜか。疑問を持ちながらもなんとなくやり過ごしていることを、この本ではしつこいくらいに訴え、その対策を考えています。著者は言語学を専攻する大学院生で、フェミニズム専門の研究者ではないことが、むしろ何にも縛られることない自由な表現となっていて、痛快です。
その自由な原書を翻訳してくれたのが、今勢いに乗る韓国文学の翻訳を行うすんみさん、女性支援活動も行い韓国の支援団体とも関係の深い小山内園子さんの2人です。本書のもつイメージ、現地での読まれ方などをどうすれば伝えられるか、3人で頭を悩ませました。タイトルがなかなか決まらず、しかしやり取りの中から今のタイトルにたどり着いたときこれが必要なことばだったと確信、お2人との対話からは本当にいろんなヒントをいただきました。この本について、訳者ならではのコメントをいただきましたのでご紹介します。
ー 「布団の外は危ない」ということばが韓国で流行っています。お出かけが面倒に思える若者たちのジョークだったのですが、ある時、彼らははたと気づいたのです。「布団の外は本当に危ないのではないか」と。差別、暴言、暴力が毎日生み出されています。布団の外に出るには、自分を守るための何かが必要なのです。私はこの本が、新しい一歩を踏み出そうとしているあなたを守る武器になって欲しい、そう思ってこの本を翻訳しました。何よりも大事なあなた自身を、ご自分のことばで守ってください。
すんみ
ーかつて訪れた韓国の女性団体で、私は初日からフェミニズムの洗礼を浴びました。スタッフは、今日からは仲間よ、コーヒーはご自由にねと笑顔で言い、こうつけ加えました。「でもカップは自分で洗ってね。フェミニズムはそこから始まるから」。誰かにカップを洗わせるヤツは、たとえ女でも許さない。そうか! フェミニズムって人権運動なんだ。軽い衝撃でした。本書を訳しながら、何度か同じ感覚に襲われました。この本を読んだ多くの方に、「そうか!」が伝わりますように。」
小山内園子
最後に。装丁は、directin Qの沼本明希子さんです。小川たまか『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』に続き、クールなフェミニズム書に仕上げていただきました。
装画は、独特のイラストとことばが魅力的なオリジナル冊子を制作している安達茉莉子さんです。お話ししてみたらイギリス留学中にフェミニズムを学んでいたとか。本文をしっかり読み込んで装画、扉絵を描いていただきました。
帯には、日本で『悲しくてかっこいい人』が刊行されたばかりの注目の韓国女性アーティスト、イ・ランさんにコメントをいただきました。「女性運動の一環として参加しなければいけない義務感がある」とご快諾、来日中に聞きに行ったトークイベントでのかっこよさにシビれました。
長々書いてしまいました。韓国で生まれたこのユニークなフェミニズムの本が、日本の新しい動きにもつながりますように、と願うばかりです。よろしくお願いいたします!(宮川)
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