お知らせ

【新刊】『失われた“雑談”を求めて』発売です 

(2022/12/6)

辻本力『失われた“雑談”を求めて』、本日発売です。

“ある種の”ライフスタイル・マガジン『生活考察』から生まれたシリーズ「生活考察叢書」の第2弾です。

 

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本書は、ライター/編集者である私・辻本が直面した、ある「危機」をきっかけに生まれました。とある雑誌の企画会議に参加していた私は、愕然とします。いつもなら、ネタの1つや2つは自然と出てくるはずなのに、何のアイデアも浮かんでこなかったからです。自身の空っぽ具合に動揺し、その原因を考えてみると、ある仮定が浮かんできました。これはコロナ禍で外で人と会うことが難しくなり、いわゆる「雑談」ができなくなったからなのではないか?

そこで思いついたのが、意識的に人と雑談をしまくるという本書のアイデアでした。以降、仕事やプライベートで会ったさまざまな人とのお喋りを記録し続け、その模様を『生活考察』最新号(Vol.08、2021年12月発行)に収録。さらに、その後も雑談採取を続け、総勢約100名との会話を収録した本書が完成するに至りました。

パンデミック以降の新習慣・仕事・コミュニケーション・家族関係・イベント・店舗経営・飲酒・旅行・留学・ダイエット・習い事・終活……人の数だけ話題あり。2021年5月〜2022年10月にかけての口承による生活ドキュメントから、とりとめのないお喋りのもたらす楽しさ、豊さ、下らなさ、愛しさを実感していただけるものと確信しております。

表紙イラストは、『かけおちガール』『姉の友人』『けむたい姉とずるい妹』などで知られる漫画家・ばったんさんによる描き下ろし。イラストのアイデアを膨らませるために行った、デザイナー・内川たくやさんを交えての雑談も収録しました。

雑談した人100人はこちらをご覧ください。

IMG_0547100人の名前は帯の裏にも

 

本の編集作業の終盤で、雑談にご協力いただいた皆さんのプロフィールページを見ていて実感しましたが、100人ってやっぱりなかなかの数です。5ページに及ぶ、さまざまな属性の人たちの、さまざまな経歴に、「この世には、本当にいろいろな人がいるんだな」という素朴な感動を覚えるとともに、その生活の多様さ・ボリューム感に圧倒させられます。

私の作っている雑誌『生活考察』は、いろいろな生活があることを可視化し、そのこと自体が豊かなことであり、楽しいことなのだ、ということを伝えたくて作ってるようなところがあります。その意味では、本書も、そうした考えの延長線上にあると言えると思います。雑談をしている時には、ことさらそうしたことを考えていたわけではないのですが。

この本を作っていく中で、当初感じていた雑談への「飢え」を解消することができました。「空っぽ」だった私は、人との対話から生まれた新たなアイデアや思考で満ち、アウトプットが待たれる状態になっています。救われたなと思います。

やはり雑談は大事なのだと、本ができあがった今、あらためて思います。自分ひとりで何かを熟成させていくことも大事ですが、その前段階には、必ず「外」からの刺激という材料・燃料が必要です。日々の雑談が、そうしたものを得る上で大きな役割を担っていたことを痛感させられた約1年半でした。

本書が、たわいないお喋りの効能と、その大きな可能性を再発見する契機となれば、これに勝る喜びはありません。いわゆる「取材」ではなく、ざっくばらんなお喋りである「雑談」という形を取ったからこそ見えてきた「本音」の数々は、「今」という時代を知る上での貴重な記録でもあります。

お楽しみいただければ幸いです。

それにしても、これだけ話していてもなお、まだまだ話し足りないのですから、雑談というのは本当に後引くものなのだなぁ、と。それに、お会いする機会がなかっただけで、お話ししたかった方はまだまだ他にたくさんいます。そんなわけで、またどこかで、お喋りができたら嬉しいです。

 (辻本)

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