お知らせ

【新刊】『コロナ禍日記』発売です 

(2020/8/13)

『コロナ禍日記』(著 植本一子   円城塔   王谷晶   大和田俊之   香山哲   木下美絵  楠本まき    栗原裕一郎   田中誠一 谷崎由依   辻本力   中岡祐介   ニコ・ニコルソン  西村彩   速水健朗   福永信   マヒトゥ・ザ・ピーポー)発売になりました。

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本書は、新型コロナウイルスが蔓延した2020年春、日本、世界各地で暮らす17人の日記を収録した本です。職業は作家、漫画家、ミュージシャン、店舗経営者など、住まいも東京、大阪、京都、ソウル郊外、ベルリン、ボストン、ロンドンなど多岐にわたり、記された期間は2020年1月23日から7月2日。17人の記録は、23万字超、448ページになりました。

それぞれの日記は、4〜5月の2ヶ月の間が中心ですが、長い人は5ヶ月間、始まりも1月から、終わりも7月までとさまざまです。掲載順は基本的に日記のスタート日で、前半には感染拡大の早かった海外在住の人が多く並びます。各国の政策や為政者のことば、外から見た日本、確実にあったアジア人差別など、知り得なかった日常が登場します。

日本国内にしても、人の受け止め方は一様ではなく、それぞれに付けてもらったタイトルは見事にバラバラでした。記録する期間が数ヶ月に及ぶことから、苛立ちも怒りも、また焦りも飽きもあり、その中から気づいたり見出したりしたこともある。歴史的な事態を、概要ではなく個人の記録として残すことの意義を感じました。

この日記本を作るきっかけになったのは、やはり日記です。

突然のイベント自粛、一斉休校要請などでにわかにコロナの脅威が現実的になってきた頃、ネット上で知人のコロナ下の日記を見かけました。本書にも収録している、漫画家楠本まきさん「UKロックダウン日記」と、カフェを運営する西村彩さん「営業自粛日記」です。感染が急増していたヨーロッパの生々しい状況、クラスター発生で注目されてしまったライブハウスを経営する夫婦の対策の日々。報道やSNSとは違う、個々の記録に目が離せませんでした。
別の仕事で海外在住の人からそれぞれの国のコロナ対策や生活の一端を聞き、日本での歯痒さや不安、疑問がますます募っていた頃でもあり、いろいろな地域の、それぞれの日常の記録を1冊にまとめるのは必要なことなのでは、と考えたわけです。

漠然と思い描いたものの、コロナで後ろ倒しになった新刊準備でなかなか手が回らず、このままではうやむやになりそう……と思ったところで編集担当を『生活考察』編集人、かつタバブックス社外役員の辻本力さんにお願いしました。

もともと始めようと考えていた「生活考察叢書」というシリーズの第1弾として、そもそも日記本がきっかけで『生活考察』をはじめた辻本氏はまさに適任なんじゃない?だよね??となかば無理やり振ったわけですが、結果的には生活考察、タバブックス、両方の姿勢を表す本になったのではないかと思います。

本が出る頃にはもうある程度収まって、あの禍の日々を忘れないために、などと予想していた事態とは裏腹に、感染は拡大の一途であり、あらゆる社会問題が世界各地で起きています。無力感にやりきれなくなることもありますが、一人一人が残した記録を大切に感じる、その体験をこの本から受け取ってもらえたら幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。 (宮川)

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