たかが映画なんだけれども

たかが映画なんだけれども 第4回「20センチュリーウーマン」 

(2017/7/27)

takaga_bnr誰にも頼まれてないけど熱く話し合う映画対談、第4回は「20センチュリーウーマン」。
1979年の話、かとうはまだ生まれていなかった!世代間ギャップは噛み合うのか。不安しかなく話し始めたけど、「カルテット」「テラスハウス」が出てきて、いろいろ腑に落ちたのでした。

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やたらとパーティーしてワイン飲んでばっかりな映画だった

 

「息子も『お母さんさみしくないの?』って。アメリカはカップル文化だからか」
「なんであんな寂しさを映画で描かれなきゃいけないのかわからない」

か 思ったのは、これは子どもを育てている人が、親として何か思うところがある映画なんでしょうか

み んー。でも結構限られてるよね。主人公のドロシアはシングルマザーで、思春期の男の子を育てていて、年下の女の子に自分の子の世話を頼むとか。普通だったら父親を探すとかだよね。

か 元夫に頼るとか。

み パートナーじゃなくても「男のことは男に」ってなるよね。

か あそこはよかったな。進歩的な母親だって思う。

み そう。なのに、ちょっと彼女たちが進んだことを教えると「行き過ぎよ」と怒る。

か たぶんあの時代としてはものすごく進歩的な女性なんだけど、それでも受け付けられない、みたいな、激動の時代なのかなと。世代間というのは一つくらいの差でこんなにも変わっていくんだ、ということを表してるということなのかな、というのは身につまされるんですけど。

み 総合的にはね。後から思うと、ああ、あの時代そうだったと思う。ヒッピーカルチャーがあって、ベトナム戦争後のムーブメントがあって、そうだそれはバンクの時代でもあったって。上の世代は景気がよかったはずなのに違う価値観が出てきたぞ、みたいな。スケートボード、西海岸カルチャー、ドラッグとかと同時にバンクがあった。

か そりゃ親世代としてはついていけないですよね。

み 親が子どもについていけないのはあの時代特有かなあ。今の親世代はバブルだったから、年取っても若者文化を普通に受け入れてる気がする。今はたち前後のミュージシャンて、親が聞いてた音楽に影響受けたとか言ってる人多い。でもあの頃は、あんなに進歩的な風なのに「わざと下手に演奏してるの?」とか音楽的にすごい保守的。

か そんなもんなんだろうな、という気はすごいした。

み あの頃は離婚してシングルマザー自体も少ないのかな。

か フルタイムの仕事してるのも。会社で設計士で女性第一号って言ってたから。

み 会社の同僚に飲みに誘われたとき「レズビアンかと思った」って言われてたね。恋人いないから?

か あそこ気になった。お母さん進歩的なようでやっぱり保守的というのを表してるのか。あの誘ってきたおじさんが、「僕はレズビアンに偏見はないけどね」って言うじゃないですか。あれがリベラルぶった、やなかんじだったから誘いを断ったのかなって最初は思ったんですけど。頑なに生きていたことを指摘されたのがいやだったのかな。

み 最後息子のジェィミーがお母さんに本を読むじゃない、恋人がいなくて年を取っていく女性について、まさにママのことを書いたみたいな(注・1970年に出版されたラディカル・フェミニストたちのアンソロジー「連帯する女性たち」内の、ゾーイ・モス「女にとっての加齢」の一節)。

か あれはひどい。母は傷つくじゃないですか。あんな働いて稼いで、あんな手入れのしがいのある大きな家を手に入れて、もう全然楽しくてすてきな生活ってかんじなのにあんなこと言われて。

み 息子も『お母さんさみしくないの?』って。アメリカはカップル文化だからか。

か 時代がそうなのか。アメリカだからか。なんであんな寂しさを映画で描かれなきゃいけないのかわからない。せつない。

み でもそう描くことで、女の子に相談したり、息子とお母さんとの関係性も出てくるし。

か 最終的にドタバタと語られた女の子たちの将来が、みんな結婚してるじゃないですか。次の世代でもそういう規範は強いのかなって思った。

み 幼なじみのジュリーは、不毛なセックスを繰り返してるけど、お母さんがセラピストでこうじゃなきゃいけないって厳しくされたことへの反動だよね。それで子どもは持たなかったと。

か あれはよかったですよね。みんなよいかんじになったっぽく描かれてるんだけど、やっぱりみんな結婚するんだって。それくらい、パートナーを得なきゃって規範が大きいのかもなって。

み 確かにそう言われれば。いてもいなくてもいいかなとは思うけど。それはアメリカだからかかね。家族が最強みたいな。めちゃバンクのアビーも子ども二人産んで幸せそうにしてた。

か しかも、病気で子ども産めないかも、と言われてものすごいショック受けてたし。ああいうアンビバレントなのがぐっとくるのかなあ。

み 「子どものいる人生はどう?」ってドロシアに聞いたら「悪いけど最高」って、かわいそう。

か かわいそうだけど、あそこでごまかさないのはいいですよね。

み そんなことないわよ、子どものいない人生だって充実してるわよ、ていうのもウソくさいか。

か あの子が言いたいことを受け止めてあげてるし、へんになぐさめないのはいいと思った。

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「子どもは思い通りにならないから、最低限やっとけばみたいにならないの?」

「ならないでしょ、だってこんな小っちゃく生まれてきた子見たらかわいいってなるよ」

み 出てくる人みんな満足してないよね。アビーが、同居してるウィリアムをベッドに誘うとき、ロールプレイングでセックスしよう、と提案したり。

か  ぼくのままじゃダメなの?」「ダメ」って、あそこ結構ツボだった。この映画でいちばんいいなとおもったのは、息子のジェイミーがつねに女性の話を聞こうとしてるところ。女性を加害しないかんじが、見てて安心感ある。あんな息子がいたら、そりゃかわいいよなあと。

み でもお母さんそう思ってないんだよね。学校サボるのを容認してるふうではあるけど、全面的には安心はしてない。ちょっと帰りが遅くなっただけでものすごく心配して。

か 親ってそんなもんなのかなあ。

み まあお母さんも悩んでるってことだよね。女の子たちに息子の世話まかせたいって言ったものの、母親的な心配はする。

か そして最後に「お母さんだけでいい」って言われて超うれしそうにしてる!

み  ねー!あそこは全母親が共感するんじゃない?うらやましーって。

か でも、どこらへんで母親だけでいいって思ったんだろう。今ひとつ映画的にわからなかった。

み 成長していくと、いろんな人と出会って、いろんなこと言われるわけじゃん他人から。でも親は特別というか。

か 親は一人だから? ちょっと説得力がなかった、私には。

み 昨日のツイッターでみたんだけど、新聞の投稿で子どもに一生懸命手をかけたのに全く逆に育って、というのがあって…

か あれよかった!

み 私のことかと思った(笑)。最後息子に、「努力が全く実を結ばない世界があるってことを教えてくれてありがとう」って締めてるのがいい。

か 面白いなと思ったけど、親になったことない人間にとっては、そんなに過剰にこうなってほしいみたいのってあるの?って不思議。

み 過剰っていうか、仕事にしたって、自分のよかれと思う方針でやってるわけでしょ。子育ても、虫歯にならないように歯も磨くし、本だって読んだ方がいいだろうと思って読み聞かせもするし。

か でもある程度大丈夫ってなったら、もういいやってならないの?

み 大丈夫ってなってればいいよ。そうじゃないケースも多々ありますからね。

か でも思い通りならないから、最低限やっとけばみたいにならないんだろうか。

み ならないでしょ、だってこんな小っちゃく生まれてきた子見たらかわいいってなるよ。

か かわいいったって所詮他人じゃないですか。

み 他人じゃないよ、自分の子じゃん。

か そっかー、イマイチわかんない。

 

「いつか失われてしまうけど、今集まって寄り添ってやってる、みたいのは観たい願望がある」
「全然違う環境の人が集まって1年だか過ごして、どの人たちにとっても成長物語になってた」

 

み でもジェイミーは、普通はできない環境にいられていいんじゃない? 違う世代のルームメイトがいて、いろんな人が出入りして、しょっちゅうパーティーとかして。

か いいですよねー。夜も出かけて行くし。あのみんな仕事してる感のないところは見てて楽しい。全部を見せちゃったらわからないけど、あの切り取り方はファンタジーですよね。みんな悩みはあるだろうけど、もう悩まなくていいよ。あんなに働かないでいいようにみえるだけで、私なんかウキウキしちゃう。

み  確かにね。あんなかわいい服着てさー。

か 何に悩む必要があるんだ! 全然話変わりますけど、ドラマ「カルテット」も、みんなあんま働いてなくてどうやって食べてけてるかわからないし、食べてゆけばよいかわからないモラトリアム期間を描いてるじゃないですか。ああいうのをわりと観たいかな。

み じゃ、あれとか観ないの、「テラスハウス」。

か 一応、観てる……。

み 観てるんだ!(爆笑)じゃ、 「テラスハウス」を実践してみるのはどう?

か どういうこと?

み 働かないでこんな楽しくやってまーす、みたいな。ほんとにできるのかっていう。

か 個人的には、あんなに毎回一緒にごはん食べたくないし。ああいうのを観て「いいねえ」って、消費ですね。「カルテット」がすごいなと思ったのが、大体がサヨナラで終わるのに、まだ続いてるとこで終わった。あれは新しいなと思って。いつか失われてしまうけど、今集まって寄り添ってやってる、みたいのを観たい願望がある。なんなんですかねえ。

み 今日の映画は、たまたまやって来た人にルームシェアしたけど、その人を求めたわけじゃない、全然違う環境の人が集まって1年だか過ごして、どの人たちにとっても成長物語になってたという意味ではよかったね。

か そういうフォーマットを求めてる気はする。

み あなたは知らないけどさー、私なんか働いてばっかで単調な毎日で、人間関係が大幅に変わるってそんなにないじゃない。たまたまの偶然な生活というのはいいな、と思うのはあるよね。

か そんな気がする。

み たまたま車が燃えちゃって来てくれた消防士の人に、今日誕生パーティーだからって招待して、ほんとに来てごはん食べてちょっとロマンスも生まれて、楽しそうーって。

か あんまり働いてるシーンほしくない。

み そうだよ。そんなカリカリ、イライラしたくないしね。思い返せばいい映画だったのかな。

か いや、おおむねいい映画でしたよ!

み 時代背景もね、勉強になったし。

か すごいていねいに描かれてた。

み 時代を振り返った時に、高度成長期だったとか、バブル期だったとか、一言でくくりがちだけど意外と複雑に絡み合ってて、いろんなことがあるんだよなっていうのがよかったかな。

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作品データ

「20センチュリーウーマン」(原題 20TH CENTURY WOMEN )

監督 マイク・ミルズ
製作年  2016年
製作国  アメリカ
配給 ロングライド

 STORY
1979年、サンタバーバラ。シングルマザーのドロシア(アネット・ベニング)は、思春期を迎える息子ジェイミー(ルーカス・ジェイド・ズマン)の教育に悩んでいた。ある日ドロシアはルームシェアで暮らすパンクな写真家アビー(グレタ・ガーウィグ)と、近所に住む幼馴染みで友達以上恋人未満の関係、ジュリー(エル・ファニング)に「複雑な時代を生きるのは難しい。彼を助けてやって」とお願いする。15歳のジェイミーと、彼女たちの特別な夏がはじまった。(公式サイトより)
http://www.20cw.net

か=かとうちあき(野宿野郎) 苦手なジャンルは、ホラー、アクション。この夏は、噂の「ワンダーウーマン」と「パワーレンジャー」を観ときたいです。

み=宮川真紀(タバブックス) 好きなジャンルは、ホラー、SF、社会派ドラマ。最近のベストは「ハクソーリッジ」。沖縄地上戦を知らなすぎて衝撃。

 

 

 

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