たかが映画なんだけれども

たかが映画なんだけれども 第17回「女王陛下のお気に入り」 

(2019/4/4)

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誰にも頼まれてないけど熱く話し合う映画対談、第17回は「女王陛下のお気に入り」。私たちの大好きなヨルゴス・ランティモス監督作品を、ようやく話す機会ができました。この対談連載のきっかけが、ランティモス監督の「ロブスター」好きがお互い判明したこと。超よかったのに周りに見てる人いなくて、見つけた!と。なのでただほめてしまうだけかもと思いつつ、これまでと少し違うテイストみたいで不安もありつつ、でもやっぱり好き…となったのでした。

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この構図からして素敵…

 

「もう大注目監督ですよ、私たちの中では」
「最高。って、最高連発してる…」

 か 「ロブスター」私もみてこれはヤバいと興奮してたら、宮川さんが今年の映画ベスト3みたいなのに入れてて、わーそうなんだと思ってからの、連帯ですよね。

み 連帯だ!ほんとに衝撃だったよね。全然話題にならなかったけど。「ロブスター」は近未来、カップルにならないと生きちゃいけない世界で。

か 関係が破綻したあと、新しい誰かとカップルになれなかったら、動物にされちゃう。

み お兄ちゃんは犬だったけど、僕はロブスターがいいって。

か ロブスターを選ぶっていうところからしてもう最高。

み でも、ロブスターにはなりたくないってカップルの相手を見つけたけどうまくいかず二転三転して、最後は不幸なんだか何なんだかで後味悪〜く終わるという。最高だったよね。

か 最高でした!

み もう大注目監督ですよ、私たちの中では。次の「聖なる鹿殺し」もより一層キモくて。

か でも最高。って、最高連発してる…。

み ほんと。ちょっとユーモアがあるのがいいよね。笑っちゃいけないんだけど、最後ぐるぐるバットとか、何なのみたいな。

か そういえば私、女王陛下はかなり評判いいって情報だけをなんかでみていて。

み そりゃエマ・ストーンも出るしね。舞台設定も18世紀の史実だし。だからええーって思ったんだよね、近未来のイメージだったのが、歴史?絵画でいうと、印象派?みたいな。美術とか衣装とか素敵そうだから、それはそれで楽しみだなーとは思ったけど。

か 私、最初監督わかってなかったんですよ。

み えええーーーっ、そうなの!

か 評判いいから宮川さんみようっていってるのかなって思ってた。珍しく行き道にサイトを調べたら、あの監督だったんだ!ヤバいってなって、慌てて電車で寝ました。映画館で万全の態勢でみるため。

み でも邦題も「女王陛下のお気に入り」って、コメディっぽいっていうか普通じゃん。逆に今までの変な感じがなかったらどうしようって思ったら、「怖かった」「気持ち悪い」ってレビューがあったからよかったーと。思ったほどじゃなかったけど。

か 気持ち悪さは、もう気持ち、ほしいすよね。

み まあ残酷なシーンもあるし、やだなっていうのもあったけど、そこまでではなかった。けど後から考えるとやっぱり…。

か うん、じわじわきますね。

み エマ・ストーン演じるアビゲイルが、元はいい身分だったけど落ちぶれて従姉妹を頼って潜り込んで、騙しながら成り上がっていくって一番わかりやすかった。でもアン女王も、女官長のサラもやられっぱなしではない。

か 大筋のストーリーは明快なんだけど、奥行きがものすごくあって、惚れ惚れだし、これですよねーって期待を違わない。ヤバい、ただひたすらほめたたえるだけで終わっちゃいそうです。

み 今や人気監督で、名だたる女優がみんな出たいって。エマ・ストーンが出てるのもびっくりだけど、嫌な役だし、ファック!とか言うし。

か それ、字幕の大御所・戸田奈津子さんがコメント寄せてて、あの時代に現代のNGワードを連発してるのがよかったって書いてあった。

み さすがですね。

 

「男が賑やかしみたいになってるのがおもしろかった」
「パワーゲームを描きながら、意外とフェミニズム映画だなって」

 

み アン女王は、たまたま女王になったってことだよね、子どもも17人産んだのにみんな死んじゃって。不幸。孤独を満たすのに、友達だったサラを頼ってたけど、そこに向上心満々の若い女性が現れ。まあパワーゲームだよね。そういう話あるっちゃあるけど、女性3人ていうのは、あんまりないような? 男がすっごい賑やかしみたいになってるのがおもしろかったよね。

か そう、パワーゲームを描きながら、意外とフェミニズム映画だなって思いました。

み 内閣の男たちが大した仕事してなくて、遊びに興じてて、昔の貴族みたい。

か アヒルレースみたいなのやったり、裸でトマトぶつけ合ったりね。あえて反転させてる感じもあって、もし男の王様で男の内閣だったら、女の人たちがああやって遊んでるだけというのもありえるけど、女3人を主人公にしてるし。

み アビゲイルが女中から始まって、上昇志向だから大佐と結婚したいっていって、侍女だからできるわけないだろうって言われても女王に取り入って結婚してしまう。男が寄ってきたらボコボコにしたりして、出世の手段で全然愛情はない。

か あそこ最高でしたよね、あそことアヒルのシーンがもう笑えて。あの監督のスローモーションをいきなり入れてくる感じとか、ほんと好きです。

み なんかよからぬことが起きるんじゃないか、みたいなね。効果音もすごい嫌で、怖い。

か 甘美な世界を描きながら音が不穏ていうのも最高ですよね。

 

「女王は満たされない思いを女性に求める」
「あの時代、結婚は政略結婚でしかないから、恋愛は別のところにあるのでは」

 

み 女王は満たされない思いを女性に求める。でも何やっても満たされずにバカぐいして痛風になっちゃうし。どうしたらいいの?女王っていう立場だと再婚とかもできないでしょ。それこそパワーゲームになっちゃうもんね。

か でも元々レズビアンで好きだったんじゃないの?

み そうかな。

か あの時代、結婚は政略結婚でしかないから、恋愛は別のところにあるのでは。結婚した後に恋愛は別でする。それで、恋愛対象が女性だったのかなと思ってみてたんだけど。

み 恋愛する余地があればね。ある?

か えー、だからあの二人は幼馴染の長い付き合いで、恋愛じゃない?

み でも旦那はいつ死んじゃったか知らないけど、17人も子ども作ったんだから、20年くらいは一緒にいたんじゃないの?

か それは政略だから。

み サラの方は結婚してて、政治にもがっつり入り込んで。だから彼女の方が満たされてる?

か 満たされてはいるけど、政治ゲームもありつつ、女王への恋愛感情はなんだかんだありますよねえ。

み あるけど、どうなんだろう。女官長まで上り詰めてて政治も自由にできて、いい夫もいても?

か 両方ある。それがまた複雑…。

み そこに若い女が来てね。心を掴まれる。うまい。

か うまいよ。もう、脚本賞なんで取れないのー。

み 「ロブスター」と「鹿殺し」は、そこまで人間関係複雑じゃなかったよね。「ロブスター」だと、まず矯正施設みたいなのがあり、次に革命家グループに行き、恋愛をしてって、一つずつステップを踏んでいく。

か あー、人間関係より、コンセプトとか世界観を重視してるのかな。こういう世界観の映画を作るぞって。でも今回は人間ドラマでしたよね。

み そうかも。「鹿殺し」は、平穏なところに、他者が入ってきて、日常が変わる。今回は一直線じゃなくて、ぐるぐるぐるぐる。

か どんでん返しとかはない。

み ずっと同じ世界観の中で生きてるけど、何かが変わっていく。はぁ、素敵。

か きゃー。パンチは弱いけどジワジワくるぞ、みたいな。

 

「誰も何も達成していない」
「自我の問題も、現代社会をトランスレートしてるみたい」

 

か あの3人、誰の気持ちもわかるじゃないですか。それがフェミニズム映画だと思った。

み アビゲイルは最終的にまあまあ上まで行って、サラも追い出したし、自分は大佐夫人になり、女王にも仕えているて、欲望は満たしたわけじゃん。自分が手の上で女王を転がせる、くらいに思ってたのに、最後に「女王に向かって勝手に口を聞くな!」とか怒られて。あそこで、アビゲイル自身もちょっとえっ?ってなった。女王の急変は、アビゲイルが子ども代りのうさぎを踏みつけたの見たから?

か 見たのは確定だと思いました。

み うさぎのキューって声で急に起き上がったもんね。でもそこでパーンとか叩いたりはない。

か そこは強く出られない、わかっちゃったけど、嘘であってほしいって気持ちがまだあるんじゃないですか。

み そうかな。後半体も弱ってもうよろよろしてたのに、あそこだけ急に目の力が強くなって。最終的に威厳を見せて。サラも、毒を入れられて気づいたはずなのに全部飲み干して。もうちょっと戦略的にできそうなのに、なんか愚直なところがある。

か たしかに、人間くさい。

み そして、誰も何も達成していない。

か 三者三様にね。衣装も言葉も現代的だと思ったけど、自我の問題も、現代社会をトランスレートしてるみたいだと思いました。

み あの3人は史実なんだよね、でも今でもありえそう、あのパワーゲームは。

か 昔の映画だと成り上がったらそれでめでたしってなりそうだけど、権力つかんで愛情も求めるとか、そういうのも今っぽいような。

み 昔だったらマンツーマンじゃなくて、権力があったらいくらでも好きにできそうなのに。

か そうそう、そんなに執着しなくてもよさそうな気が…。

み もしかしたら女性だからそうさせてるのかな。男だったらいくらでも妾でもなんでも配置できるけど。

か 女王だったらそういうのありかと思ってたんですが。史実のアン女王にもいそうじゃないですか。

み その時代はもちろん男社会でしょ。女王だからといって若い男をはべらして、とか慣習的にできないから女性とってなったんだと思ったよ。だから設定が上手だなと思った。

か そうかー。私は心情的にレズビアンなのかと思ってみてた。

み だって18世紀でしょ、女性がそんな自由恋愛してたのかな。

か できないのかー。権力を持ったとしても。

み わからんが。それにしてもアカデミー賞最多ノミネートだよ。でもとったのは主演女優賞のみ。脚本賞とかもとってないんだよね。

か 脚本すごくいけてると思うけどなあ…。やっぱりもうちょっと口当たりのいいやつがいいってことなんでしょうか。

み とりまくったのが「グリーン・ブック」。それについてはまたいつか!

無題31
画策を失敗して4文字ワード連発しながら長い廊下を闊歩するエマ・ストーン…最高 
イラスト=み

 

女王陛下のお気に入り

監督  ヨルゴス・ランティモス
製作年 2018年
製作国 アイルランド、イギリス、アメリカ
上映時間 120分
http://www.foxmovies-jp.com/Joouheika/

 
STORY  
18世紀初頭、宿敵ルイ14世のフランスと交戦中のイングランド。揺れる国家と女王のアンを、彼女の幼馴染で女官長を務めるレディ・サラが操っていた。そこに、サラのいとこで上流階級から没落したアビゲイルが召使として働くことになる。サラに気に入られ、侍女に昇格したアビゲイルだったが、彼女の中に生き残りをかけた野望が芽生え始める。夫が総指揮をとる戦争の継続をめぐる争いにサラが没頭しているうちに、アビゲイルは少しずつ女王の心を掴んでいくのだが…。(公式サイトより)

み=宮川真紀(タバブックス) 好きなジャンルは、ホラー、SF、社会派ドラマ。好きな監督といえばスパイク・リー、最近見てなかったけど「ブラック・クランズマン」よかった!見る映画のアダム・ドライバー率が高くて、好きなのかな…

 か=かとうちあき(野宿野郎) 苦手なジャンルは、ホラー、アクション。「月夜窯合戦」がよかったです~! あとは「ヨーゼフ・ボイスは挑発する」「ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ」も。ドキュメンタリーつながりで「沈没家族」もはやくみたい!

 

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