たかが映画なんだけれども

たかが映画なんだけれども 第12回「寝ても覚めても」 

(2018/9/25)

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 誰にも頼まれてないけど熱く話し合う映画対談、第12回は「寝ても覚めても」 。ホラーだ、理解できない、モヤモヤする、とかの評判を聞いていたけれど、宮川は手放しに好き、かとうは出会いシーンに根本的な疑問を。ふたりとも観終わってすぐに原作を読みはじめていて、確かにしばらく浸っていたい作品でした。

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ただ美しいふたり…

 

「逃げて、仙台に降りて、やっぱり帰るっていうのも、わかる気もする」
「防波堤の意味がわからないんだ、自分と違うって理解して」

み 濱口竜介監督の『ハッピーアワー』すごいよかったけど、これも好きだった。原作今読んでるけど、柴崎友香さんの小説って情景描写が特徴的で、それが映画にも合ってる感じ。

か 小説は朝子目線だから、恋してわーっとなってる感じだけど、映画はそれを引きで見ているみんな、みたいな感じだった。

み 原作ものっていうと「勝手にふるえてろ」にも出てた渡辺大知が岡崎役で出てて思い出したんだけど、あちらは内面小説で。

か 内面を、ファンタジー感満載に表現するのがうまかったですよね。

み そうなんだけど、一個一個の景色は小説に出て来なくて、映画にははっきりとある。それで私はそんなにピンと来なくて。

か そうなんですか、私あれ最高だったけど。

み 先に原作読んでたから、頭の中の妄想が、これ?みたいになっちゃった。小説で内面をずっとダダ漏れしてるんだけど、それを映画はファンタジーで表してて、自分が思い描いてたのと全然違うから、ええー?みたいな。

か 好みの問題かな。あれを見てもヤバいとは思わないし、うまくトランスレーションしてたと思ったんですけど。「寝ても覚めても」は原作をまだ全部読んでないからわかんないけど、映画の方がなんかヤバそう。

み ホラーだとか、モヤモヤするって声結構聞くよね。朝食のシーンで、亮平はカレーだと思ってご飯にかけてたけど。

か 「ラタトゥイユだけどね」って。

み そう、彼女はパンと一緒に食べてた。それが、なんか不穏だとかいう意見があったらしい。でも亮平は気にせずテレビ見ながら「ほうか?」って。で朝子も「今度やってみる」って、その感じは5年一緒に暮らしてる年月っぽいなってすごい思った。

か 確かに。朝それぞれ好きなものを食べて。自然だけど、不自然っていうか。

み 朝子が亮平に「もう会わない」って言ったのは、麦のことを忘れられなくてもう無理って。でも亮平は納得できなくて朝子がいそうなところにわざわざ行って、そこで震災が起こって歩いて帰るんだけど。

か あの日に彼がくるかもしれないからやめてるってところがすごいですよね。周到だなって。

み でも歩いて帰る中、朝子も探して会いに行く。

か それで会えちゃう。なんなんすか。でも亮平が歩いて帰る中で建築業みたいな人と喋ったり、泣いてる女の人にハンカチ渡したりするシーン、人柄が現れてていいし、ああいうやりとりが震災の時だからだなあって。

み 震災後、二人で毎月ボランティアに行くじゃない。ちょっとちぐはぐだったけど、被災地に行くことで保っていたような。彼がずっと運転して、へとへとに疲れても、また来月来ますって。保つためのものというのもあるかなと。それで最後朝子が麦と逃げて、途中で仙台に降りて、やっぱり亮平のところに帰るっていうのも、わかる気もする。あそこで一文無しで残されて、仮設住宅の平川さんのところにお金借りに行く、そういうところもすごくよかった。浮世離れしてるところと、現実の、理解してくれた人がいたっていうのがいい。

か あれ車が仙台で止まってなかったら、そのまま行ってたかもしれないですね。

み あそこで麦が「仙台なのに、海見えないんだね」って言ってて、海外にいて震災を経験してないみたいで「え、麦知らないの」って、それではっと我に返ったというのもあるのかも。

か 防波堤の意味がわからないんだ、自分と違うって理解して。うまくできてますよね。麦は堤防を上がらない。

み ピンと来ない人は、逃げたくせにまた帰るなんて勝手だなって思うんだろうな。

か 私はあのまま北海道に行ってほしかったですけどねー。あのホラー感、最高。携帯を車からバーンて投げて。

み でもそれも麦の真似っこじゃん。最初に麦が駐車場で仕事の電話無視してバンって投げてたもん。

か そっか。感情が乗り移ったのか。

 

 「あんな謎めいた感じで好きになっちゃう?」
「見た目というか、見て好きになるっていうのはある」

か 亮平は朝子に会った時から失礼な態度されて気になってたわけでしょ? それで揺さぶられて恋に落ちる。恋ってそういうものなの?

み なになに?? 根本的な問題?

か 朝子も麦に対して、何かわからないけど気になる。わからない、捉えきれないものに恋い焦がれる、それが根底に描かれてるのかなあって。

み まあそうだね。そりゃあるでしょ。お互いよく知って、っていうのももちろんあるだろうけど、一目惚れだって、古今東西ある。

か そういうのがどーもわからなくて。久々にそういうの見た。

み 小説の方でも、洋服を見に行って、形がすごく好き、着たらもっといいかもっていうシーンがあって、見た目というか、見て好きになるっていうのはやっぱりあるよ。

か 好き、とかいいなって思うことがそんなに執着になるっていうのが、ええー?って。麦と朝子、最初からわーって盛り上がって、引きずられた感じで恋に落ちるでしょ。亮平の方は、パワーゲーム?

み 亮平との出会いの方が普通だよね。近くにいて何となく気になって、それでギューっとされたら好きかも、やっぱり麦よりこっちの方が生身だし、っていうのがあるんじゃない。あの時点で3年くらい麦とは離れてるわけでしょ。

か 朝子さんの心理はわかるんだけど、亮平の方が。あんな謎めいた感じで好きになっちゃう?って。

み だって最初が思わせぶりで、じーっと見られたり、顔触られたりしたら。

か やべえやつとしか思えないけどなあ。

み だってきれいじゃん。

か じゃ見た目なの、やっぱり。

み 見た目でしょ。

か じゃー、麦にしても朝子は見た目なのか。えー。

み そりゃ映画だからさ、きれいですよ。でも、相性みたいのもあるんじゃない。

か それが一目惚れというものなのか。何なんだ。麦だってあんなにいきなり近づいてきたらヤバいやつとしか思えないでしょ。どんなに素敵だと思っても。

み そんなことないんじゃない?いっぱいあるじゃん、そういうの。そこに引っかかっちゃったらもう。例えば家でお好み焼きの時に、マナちゃんが自分の演劇のビデオ見せて、くっしーが演劇やって途中で挫折したっていうのがあって喧嘩になって、それで意識し始める。

か だってあそこにはちゃんとコミュニケーションがあるじゃないですか。でも麦は歩いてきていきなりチューですよ。ヤバいやつじゃないですか。

み だって朝子だって待ってるじゃない。写真みてて麦が後ろをすっと通ったときにもう気になってる。

か あー、じゃあことばじゃなくて、お互い来い来い、よし行くぞって、コミュニケーションができてるわけ?

み だってそれこそ盆踊りで、一目見て気に入ってその夜に、みたいなのあるんでしょ、昔から。

か それは性欲で一晩限りのもので、継続しないものだと思ってました。でも継続するわけだから。

み だから継続しなかったじゃん、麦とだって。

か 結構いたじゃないですか。あれがパッと終わるならわかる。じゃあ麦が一番浮世離れして、朝子、亮平、謎のヒエラルキー。徐々に振り回されてる構造?

み まあそうかな。でも1対1の関係を望むなら、どっちか選ばなきゃいけないから、お互い傷つけたかもしれないけどよかったんじゃない?

か そうかー。じゃあいい話だ。あの後うまく行くのかよくわかんないけども。

み でも朝子は社会性がないわけじゃないし、それは亮平といた5年間で培われたものかもしれないし、それも心地よいと思ってるんじゃない?猫のジンタンもいるしね。

か ジンタン大事。

 

「正しいことをしたかったの、ってセリフが、マグマを感じますよ」
「だから最後麦の方に行ったのは、怒ってもしょうがないんじゃないか」

み 最後二人で走ってるところ、亮平全速力で走ってるのに全然離されない朝子、すごい。しかもフォームがきれい。体仕上がってるんじゃないかって思った。

か 確かにあのシーンきれい。人物像的には速くなさそうなのに。

み あの日本酒の会社にコーヒー届ける時、外階段から登ってたのかも。

か あー、ひそかに筋トレ。あんな麦を想い続けるって、体力ないとできなそうですもんね。

み 麦を待ってる時の朝子って何やってたんだろう。

か 大阪時代ですか。わからなかった。働いてる描写はなかった気がする。

み 麦がDJやってて、岡崎がたこ焼き焼いてたっていうのはわかった。大阪ってそんなに働かなくてもやっていけるのかね。

か そうなんですかねえ。働いてるけど、若くてまだ学生気分が抜けてないときなのかな。

み 何で東京行ったんだろうね。そしてなぜあの喫茶店で働いてたんだろう。

か 小説だと服と写真が好きで、働いてて、というのがわかっていいですよね。映画だと、趣味が何なのかとか、わからない。

み 写真が好きなんじゃないの?牛腸さん。でもそれは麦と出会ったからだよね?

か わー、麦しかいないんですよ、ヤバい。そして体力がある。

み 最後のランニングシーンでわかる。あと東北にボランティアに行ったり、ガッツはある。

か 正しいことをしたかったの、ってセリフが、マグマを感じますよ。

み それがいつどこに出るかわからないけど。だから最後麦の方に行ったのは、怒ってもしょうがないんじゃないかって。亮平の方も、もうちょっと真剣に向き合ってたらちがってたのかもよ。彼はこれで結婚する、もう人生上がりだって思ってたんでしょ。

か でもずっと不安だったんですよねえ。

み だけど言わないで、大丈夫大丈夫って思いながら、何となく結婚してる風の暮らししてて。

か だから見てるとホラー感あるんですよね。

み 向き合ってなかったんでしょ、何となくこのまま行くって。

か ボランティア行って、猫を飼って。

み そうそう、大阪に行って籍入れてって勝手に確信してたけど、ダメになってそんなに怒るなよって。急に人が変わったみたいに「帰れー!」なんて。

か 裏切られた!って。私もそこが信じられなくて、何豹変してるんだって。いいじゃないかと。

み それが逆にうまいなと思ったけどね。

か まあそういう人もいるんだろうなって思うけど。

み 帰れって言ったって、いるのわかってるし。

か そうそう、とりあえず、よかったって言えばいいじゃん。

み 「猫捨てたで」とか言うし。猫を使うなー!そういえば亮平、ジンタンの名前呼んでないよね。

か ほんと?1回も?

み 多分。あのラタトゥイユのシーンで、カレーだと思って無防備に食べてる時、朝子が「ジンターン」って言ってごはんあげて、でも5年一緒にいるダンナ状態の亮平は、猫を気にすることもなく、料理内容も気にせず、テレビ見ながら食べてる。無意識ぶりを表してるよね。

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ジンタンさえ無事でいてくれたらそれでいい…  イラスト み

 

「寝ても覚めても」

監督   濱口竜介
製作年 2017年
製作国 日本
上映時間 119分

 STORY
東京。丸子亮平は勤務先の会議室へコーヒーを届けに来た泉谷朝子と出会う。ぎこちない態度をとる朝子に惹かれていく亮平。真っ直ぐに想いを伝える亮平に、戸惑いながら朝子も惹かれていく。しかし、朝子には亮平に告げられない秘密があった。亮平は、2年前に朝子が大阪に住んでいた時、運命的な恋に落ちた恋人・鳥居麦に顔がそっくりだったのだ――。
5年後。亮平と朝子は共に暮らし、亮平の会社の同僚・串橋や、朝子とルームシェアをしていたマヤと時々食事を4人で摂るなど、平穏だけど満たされた日々を過ごしていた。ある日、亮平と朝子は出掛けた先で大阪時代の朝子の友人・春代と出会う。7年ぶりの再会。2年前に別れも告げずに麦の行方が分からなくなって以来、大阪で親しかった春代も、麦の遠縁だった岡崎とも疎遠になっていた。その麦が、現在はモデルとなって注目されていることを朝子は知る。亮平との穏やかな生活を過ごしていた朝子に、麦の行方を知ることは小さなショックを与えた。
(公式サイトより)

み=宮川真紀(タバブックス) 好きなジャンルは、ホラー、SF、社会派ドラマ。先日足利に行くことがあってそこが舞台の「湯を沸かすほどの熱い愛」を配信で観たんですが色々なんじゃ??となりました…「500ページの夢の束」を早くみたい。

か=かとうちあき(野宿野郎) 苦手なジャンルは、ホラー、アクション。そして、恋が、恋がわからぬ……。

 

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