たかが映画なんだけれども 第5回「ワンダーウーマン」
(2017/9/15)
誰にも頼まれてないけど熱く話し合う映画対談、第5回は「ワンダーウーマン」。ウーマンものが続いています。ギリシア神話からはじまり、時空を超えて地球の大戦へ、そして現代ではスーパーヒーロー。壮大すぎてとまどうも、能力をコントロールする女性とそれをとりまく人々の物語、とすると現代的ないろいろが見えてきたのでした。
「人間は戦争とか同じことを繰り返してる。どうやって解決するんだろう」
「解決してこれか!ってかんじじゃないですか。そこで失望しそう」
か 元からこのストーリーがあったんですかね、女だけの神の島にいたって。むしろそういう島から現代に来てわしゃわしゃする話かと思ったら、意外と第一次世界大戦に行っちゃうんだ!とおもって、びっくりした。いやー、壮大な話だった。
み ギリシア神話だからね。ゼウスに、軍神アレス、粘土で生まれたダイアナ。壮大にしないとやってけないよね。
か ゼウスとかいつの話だよって。その頃からあの島にいたんだから、時間の流れはゆっくりですよね。でも地球に来て、ひとつひとつへえーっ、そうなんだってわかっていくじゃないですか。適応能力がハンパないのかも、ダイアナが。買い物したり、町でソフトクリーム食べてすばらしいわって納得してる。
み すごい自然に街に溶け込んで、そんなにびっくりしてないよね。そもそもどういうことなんだろう、設定が。今は会社みたいなところにいて、100年くらいたってるのに歳とってないよね。そういう説明はされてるのかな。不老不死設定とか。
か 戦って、やられない限りはずっと生き続けるんじゃないでしょうか。人間社会にずっといないといけないとなったら不老不死の悲哀みたいなものもあるのかも。
み 外で事故とかあったらワンダーウーマンに変身して助けに行ってた。やっぱりアメコミだから基本的にヒーローっていうことだよね。
か でも、ヒーローっぽさがそこまでないからいいですね。嫌な感じがしなくて。
み 時間と空間の移動があまりにも壮大すぎて。アメコミって感じはしないよね。だいたい舞台がアメリカじゃないし。
か そうだそうだ。
み っていうか、なんで英語しゃべってんの?って思ったけど、アマゾネスは平和を見守らなければならない役割だから人類のことはつねに学ばなきゃいけない、だから、何百ヵ国語もできるっていう設定で、じゃあいいかって思った。
か でも人間の世界は別個なわけですよね。だからほっときゃいいのにって思った。ダイアナのお母さんも「行かなくていわよ」とか言ってましたよね。行くって言わなきゃよかっただけな気も。
み ゼウスの教えは絶対っていうことだよね。
か 人間界の戦争は軍神アレスの仕業だから地球に来て倒した。もう一回、アレスが現れたときには戦うぞと。色々設定がうまいですよね。
み 人間世界に来て、どうして今に至るのかがめちゃめちゃ気になる。アレスは結局復活しなかったのかな。
か でも神だから。そして復活してなかったら、人間はほんとどうしようもないっていうのをずっと観てることになる。
み あー、軍神を倒したのに、人間は戦争とか同じことを繰り返してるっていうのをどうやって解決するんだろうね。
か 解決してこれか!ってかんじじゃないですか。そこで失望しそうなもんだけど。でも冷戦時代になんとか核戦争にならなかったのは、ワンダーウーマンが止めてくれたのかもしれない。
み 北朝鮮のミサイルも、もしかしたらワンダーウーマンがちょっと軌道を変えてくれてたり。あ、それで会社をやって情報とかめっちゃ集めてるのかな。
か もはや情報戦、みたいな。最後メールしてたの誰でしたっけ。コミックス読めばわかるんですかね。
み (パンフレットのコミックスの情報を見て)「空飛ぶ鉄腕美女」だって。
か すごい、それをこんな現代風にしたんだ。
み 最新刊「彼女自身も知らなかった、衝撃の真実!」、誰が知ってるの、じゃあ!「新解釈オリジン」とか。元のコミックスはあるけど、スピンオフだったり二次創作だったりがどんどん出来てるってことかな。映画で苦悩みたいなところを描いた、と。
「男が、悪くはないけど、ちょっと弱っちい。それぐらいがいいんだろうね」
「マッチョで、敵対してたけど仲良くなるみたいな描写いらない」
み アクションとか冒険とかは痛快、歴代のいい映画の断片が感じられたな。一晩だけ恋に落ちたけど、使命を果たすためにそれぞれの道を行くとか。最後の戦闘シーンとか、自己犠牲のくだりは「スター・ウォーズ ローグ・ワン」にすごい似てるなと思った。あの光のムチとか「インディ・ジョーンズ」っぽいし。アクションちょっと「マトリックス」っぽかったよね。一瞬がスローモーションになって回し蹴り、みたいな。
か 銃弾が見えるとか。マトリックスのあとって、アクション映画はだいたいあれですよね。でもあれをやることによって超人じゃない感はすごい出るんだよな。すごい発明ですよね。
み 最初の島にいるときは、そんなに超人感はないじゃない?普通に訓練して強くはなってたけど。師匠と戦いの練習してたときに、カメハメハーっみたいなのが出て、パワーに気づくと。あれは全員が出せるわけじゃないのかな。
か そうだと思う。そういう能力が元からあって。だから思ったより、最初の戦闘シーンで銃に負けて死んじゃう人もいたじゃないですか。あれ、もうちょっとがんばってくれないのかって。
み やっぱり神の血をわけた…粘土だけど。
か 元からそれを持っていた人が、コントロールできるようになるっていう話なんですよね。
み フォースじゃん!しかも兄と妹だし。皇帝が絶対とか、最強兵器の開発とか、いちいち「スター・ウォーズ」思い浮かんじゃって。
か また1ランクパワーが上がって、スーパーサイヤ人になりました。
み 「人間なんて救うに値しない」ってお母さんが言ってたのを思い出してたけど、仲間たちが、最後弾はなくなったけど肩を組んでがんばろうってやってるのを見て、またがんばるって。マル博士の仮面をとって、こいつを殺せって言われても、なびかず。あの博士を女性にしたのはなんだろうね。ちょっと訳あり、顔に傷がある。
か なんなんだろう。マッドサイエンティスト感はあんまりなかったですね。でもスティーブが近寄ったとき、ちょっとぽっとなってましたよね。
み ぽっとなったけど、でもチラチラ他の女見てるのに感づいて、私を女として見ていないって。
か スティーブは基本いい人なんですよね。何一つ悪いところがない。
み 悪くはないけど、ちょっと弱っちい。上司に反抗できないとか、ダイアナが途中で別の村を助けに行くって言ってるときもそんなにうまく、パキッとは説得できず。それぐらいがいいんだろうね。
か もっとマッチョで、敵対してたけど仲良くなるみたいな描写いらないってあれ見て思った。最初からいい人でいいじゃん。
み 元はもしかしたらちょっと違ったかもしれないけど、女だらけの島で助けられたっていうのがあるから。
か そのときからいい人だったじゃないですか。あ、あそこよかったな。ロンドンに行ったときに、刺客がいっぱい集まるじゃないですか。あのとき最初ダイアナを守ろうとするんだけど、自分より全然強いってわかったから「君行って、頼んだよ」ってなるじゃないですか。あれは「マッドマックス 怒りのデスロード」のときもあったんですよね。最初マックスが撃ってたんだけど、フュリオサの方が上手いってなって銃を渡して。
み そうだっけ!
か そう、いいシーンがあるんですよ。ああいうシーンが今まであんまりなくて。女の人が強いってわかったらぱって渡す印象的なシーンだった。今回はそれよりさらに、もっとスマートだった。まず俺がっていうのがなくて、どんどん進化してると思った。最初からこの人強い、っていうのをずっと持ってるのがスティーブのよさ。
み 確かに「怒りのデスロード」以前・以降で表現変わったかもね。あれも女の世界だけになって。
か ケアする男性がいるのが、あれくらい。自分の血をあげちゃって、去っていくんですよ。
「女同士でうまくやってたんなら、いいじゃないですかそれで」
「自分が助けたんだから情は移って、それが初めて見た男。それは自然」
か この映画、宣伝の仕方で炎上してて、それで私知った。
み そうなの?
か プレスリリース出た時点で「すごい美少女」という美女推しだったんですよ。他の国では戦士とか、強さとかを言っていて、日本なんなのって。
み でも、これまでここで取り上げたのも、相当おかしかったよね。ヘンテコ家族の話「はじまりへの旅」も、家族愛ものにしてて。
か おかしいですよ、家族の映画、いやいやいやって。ちょっと失敗が多すぎますよね。それで売れるならいいけど売れない方に行っちゃうじゃないですか。逆に気を使うのか、幅広くして失敗するのか。「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」ってあったじゃないですか、あれも、ほんとこれダメだろうと思った。宮川さん見たんですよね。
み 見たんです。
か ああいう詞的な方がいいと思ってそうしたのかな。そんな話じゃなかった。予告編もいい話に作りすぎてるんだよな。
み あれ途中ちょっと寝たんだけど、そのタイトルって死んだ奥さんが水道が壊れたときに残したメモだったんだよね。ロマンチックじゃないし、結構トンデモ映画だった。みんなヤなやつだし。
か みんなヤなやつでもいいんだよ、好きにやればって受け止めればいいんだけど。
み でも、いい話なんです、って打ち出される。結局感動ものがいいんでしょ?って。
か そういうのが受けると思ってるだけだと思うんですよ。
み ワンダーウーマンは、ワンダーウーマンだったよ。
か やっぱり強いぜってところ言ってほしいですよね。強いと安心して見てられていいなって。ガタイのいい女の人を見る楽しみってありますね。あと、秋元康さんの公式ソングの歌詞でも炎上してた。
み なにそれ?秋元さん最近炎上狙いすぎじゃない?
か 乃木坂46がワンダーウーマンの公式アンバサダーになって、「女は一人じゃ眠れない」だって。全部の歌詞見てえーってなった。それで乃木坂の人が感想を言っていて、強い女の人は拒絶されたりするけどこの映画はそういう感じじゃなくて誰が見ても楽しいかんじになっていますって。それで興味持った。
み でも普通に考えて「秋元先生、ワンダーウーマンの歌詞お願いします」って言われて、そのタイトルの歌はないでしょう。あ、あの船のシーン?ロンドン行くとき、隣に寝る寝ないみたいな。まさかそこ?
か そこか!
み あれ別に一緒に寝てって誘ってないじゃん!
か あそこでドキッとしないところが好感度高いですよね。
み まあちょっとしてたかも? 快楽には男はいらない、とか話しつつ、ちょっと触れちゃってごめん、とか。
か そうか。ドキッとしないと解釈して見てたけど。あとキスシーンも、彼女はそういうことしたことないわけじゃないですか。でも意外と自然に、ちょっと積極的に行ってたのがいいなって。
み それは、女性とはあったんじゃない?全然拒絶ってかんじじゃないし。お風呂でスティーブの裸を見て「男として標準?」とか。知識では知ってたけど、ワーオみたいなかんじなんじゃない、神といえども。
え、女同士でうまくやってたんなら、いいじゃないですかそれで。
み だって男を見たことないんだもん。存在は知識として知ってるんだし。
か 意外と勉強してるんだっていうのはあとのシーンで知るから。
み 他の人たちは見たことない男だから殺せって言ったけど、自分は海の中で助けたから。だからうまい設定だよね。自分が助けたんだから情は移って、それが初めて見た男。それは自然なんじゃない?
み みんなどういうふうに観てるのかな。
か 「アナ雪」も能力が元からあって、それを押さえつけられてたけどコントロールできるっていう物語で、今回も獲得するというよりは元からあるものをどう使うかっていう話だった。成長物語でもあるけど、元からあったものをっていう。
み 元からあるって本人思ってないよね。でも「スパイダーマン」とかだと、こんなことができるとは!って驚くけど、ワンダーウーマンはそんなでもない。
か バーンバーンとぶっ壊して、あ、またできちゃった、みたいな。それはアナ雪より進歩したところなのかな。
み エルサはそこに悩みを持ってたんだよね、こんな能力持ってみんなを傷つけちゃうって。ワンダーウーマンはあの島で、困っている人を助けるために力を使いなさいって教えられた。とにかくアレスを倒せば世界が平和になるって思ったのに違ったから、そこで初めてどうしたらいいのって悩んで……そこからいろいろあって会社を興した。
か どういうことなのー。
み そこがいちばん謎。その過程が知りたい。100年くらいあの容姿で身を隠してるのかな。でもそこはポイントではない?
か そうですよ!違いますよ!
み そっか。強い女が世界を救う、ってことでいいか!
作品データ
「ワンダーウーマン」(原題 WONDER WOMAN )
監督 パティ・ジェンキンス
製作年 2017年
製作国 アメリカ
配給 ワーナー・ブラザース映画
STORY
ワンダーウーマンが生まれたのは、女性だけが暮らすパラダイス島。ダイアナ(ワンダーウーマン)はその島のプリンセスだった。ある日、不時着したアメリカ人パイロットを助けたことから外の世界で戦争が起きていることを知る。彼女自身の力で「世界を救いたい」と強く願い、二度と戻れないと知りながら故郷をあとにする……。そんな彼女は、初めての世界で何を見て、何のために戦い、そしてなぜ美女戦士へとはったのか!?(公式サイトより)
http://wwws.warnerbros.co.jp/wonderwoman/#/boards/wonderwoman
か=かとうちあき(野宿野郎) 苦手なジャンルは、ホラー、アクション。「ベイビー・ドライバー」と「新感染」観て、(楽しいけど)ぐったりしました。「エル ELLE」が観たい。
み=宮川真紀(タバブックス) 好きなジャンルは、ホラー、SF、社会派ドラマ。夏は飛び回ってて映画はごぶさたでした。「シンクロナイズドモンスター」が楽しみ。
やっぱり映画なんだけれども 一覧
- やっぱり映画なんだけれども 第3回 女バディ映画 SHE SAID、そばかすほか(ポッドキャスト版)
- やっぱり映画なんだけれども 第2回 映画と政治 裸のムラほか
- やっぱり映画なんだけれども 第1回 家族と映画 アネット/三姉妹/ベイビー・ブローカー
- たかが映画なんだけれども 第33回 ドライブ・マイ・カー
- たかが映画なんだけれども 第32回 5月の花嫁学校
- たかが映画なんだけれども 第31回 ペトルーニャに祝福を
- たかが映画なんだけれども 第30回SNS 少女たちの10日間
- たかが映画なんだけれども 第29回「花束みたいな恋をした」
- たかが映画なんだけれども 第28回「82年生まれ、キム・ジヨン」
- たかが映画なんだけれども 第27回 「はちどり」
- たかが映画なんだけれども 第26回「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」
- たかが映画なんだけれども 第25回 コロナSP「愛の不時着」
- たかが映画なんだけれども 第24回「アナと雪の女王2」
- たかが映画なんだけれども 第23回 この星は、私の星じゃない
- たかが映画なんだけれども 第22回 「おしえて!ドクタールース」
- たかが映画なんだけれども 第21回「アラジン」
- たかが映画なんだけれども 第20回「新聞記者」
- たかが映画なんだけれども 第19回「愛がなんだ」
- たかが映画なんだけれども 第18回「ブラック・クランズマン」
- たかが映画なんだけれども 第17回「女王陛下のお気に入り」
- たかが映画なんだけれども 第16回「アイ・フィール・プリティ!」
- たかが映画なんだけれども 第15回「パッドマン」
- たかが映画なんだけれども 第14回「search/サーチ」
- たかが映画なんだけれども 第13回「愛と法」
- たかが映画なんだけれども 第12回「寝ても覚めても」
- たかが映画なんだけれども 第11回「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」
- たかが映画なんだけれども 第10回「焼肉ドラゴン」
- たかが映画なんだけれども 第9回「万引き家族」
- たかが映画なんだけれども 第8回「パティ・ケイク$」
- たかが映画なんだけれども 第7回「BPM」
- たかが映画なんだけれども 第6回「パターソン」
- たかが映画なんだけれども 第5回「ワンダーウーマン」
- たかが映画なんだけれども 第4回「20センチュリーウーマン」
- たかが映画なんだけれども 第2回「はじまりへの旅」
- たかが映画なんだけれども 第1回「たかが世界の終わり」