たかが映画なんだけれども 第26回「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」
(2020/7/15)
誰にも頼まれてないけど熱く話し合う映画対談、第26回は「ストーリー・オブ・マイライフ」。アカデミー賞各賞にノミネートされていて、女性映画として評判もよく、再開し始めた映画館でちょうど公開が始まり、ひさびさに大スクリーンでの鑑賞を楽しんできました。だけどなぜ今『若草物語』?あれ、そもそも読んでたっけ?と混乱もして……
STORY
ジョーはマーチ家の個性豊かな四姉妹の次女。情熱家で、自分を曲げられないため周りとぶつかりながら、小説家を目指して執筆に励む日々。控えめで美しい姉メグを慕い、姉には女優の才能があると信じるが、メグが望むのは幸せな結婚だ。また心優しい妹ベスを我が子のように溺愛するも、彼女が立ち向かうのは、病という大きな壁。そしてジョーとケンカの絶えない妹エイミーは、彼女の信じる形で、家族の幸せを追い求めていた。(公式サイトより)
美しすぎて絵のような4姉妹…
優等生っぽいイメージが強くて、読まなかったのかも
読んでるとジョーの気持ちになっちゃうんですよ、出来が良くなくても
み 役者がすごいよね。エマ・ワトソンが主役じゃないんだもん。ちょい役っぽいおばさんがメリル・ストリープだし。
か 全然情報得ないで見てたから、え、あの人そうだよねって。ソワソワしちゃった。すごいな〜。
み お母さんのローラ・ダーンは「スター・ウォーズ」だし。あのすばらしい提督。
か えー覚えてない。「マリッジストーリー」出てるって。あれか!あの弁護士の人、そっちの方がわかる。
み 幅広いね〜。
か すごいですね、出てる人が豪華で面白かった。
み ローリーは「君の名前で僕を呼んで」かー。ちょっと変わった感じ、めっちゃ足長い。
か 肩幅狭いなーって。
み 女子の中で男子が一人入っても浮かないタイプ。
か そうそう。
み 彼はイタリアの血が入ってるっておばさんに嫌味言われたり、最後彼氏になるフレデリックもドイツとか。移民が多かったりするけど、それは原作どおり?
か そこ聞きたかったんですよ、改変してるのかなって。宮川さんが今でもバッチリ覚えてると思ってたから。
み ヤバ。全然覚えてない。っていうかちゃんと読んでないかも。最後、出版社で原稿料の交渉するシーン、「著作権は大事そうね」って言っててそれはよかったけど、それも元々あるのかな。
か 『若草物語』って何編も出てて、「続」とか。年齢も状況も変わってくんだけど、だいたい覚えてない。今回の映画は、現代に寄せてるんじゃないかと思ったけど。でも昔読んだのも小学生の頃だしなあ。ただ昔も、これは書いてる人とジョーが同じなんだろう、というのは理解してた記憶があるけど。
み 三人称で書いてるの?そうだよね、ジョーは不機嫌だったってあるし。
か そう、私視点ではないはずなんだけど、どう考えてもジョー目線で読んでゆく物語で。私の一番の記憶としては、ジョーに憧れたり、ジョーの気持ちで読むんですよ。これは当然ジョーの物語だと思って読んでたんだけど、それを母親に話したときに、自分は小学生の時エイミーの気持ちになって読んでたんだよって言われて、えっ、エイミー視点になる人もいるんだって、それだけはすごい覚えてて。
み エイミーは、映画の中では、一番単純ていうか欲望に任せてる感じ?
か 利発で賢い感じもしたけど、おしゃまで。母は末っ子だったし、そういう境遇を合わせて読んでるんだろうな。おばさんに聞いてみても、私は誰だったとか言ってたから、姉妹がいる人にとっては、思う人が違う物語なんだって教えてくれたのが、若草物語だったんです。しかし、話はほとんど覚えてない。
み あー姉妹だったりすると、それぞれね。
か でも出てくるみんな優秀だから、小さい時読んでても、とはいえなあ、みたいな気にもなった。
み そうそう、優等生っぽいイメージが強くて、読まなかったのかもしれない。
か だけど読むとジョーの気持ちになっちゃうんですよー、出来が良くなくても。
み でも映画の中で、ジョーが私は粗野だし、とか言ってるけど、ルックスがさ、全然そういう感じじゃないから。
か 私も全然イメージと違った。
み エイミー役の子がジョーだったらわかるんだけど。「ミッドサマー」のイメージがあるからかもしれないけど。
か え、エイミー可愛いじゃないですか。今回かなりエイミー株が上がったんですけど。魅力的。
み メグはわかるよ、エマも今回は目立っちゃいけない、みたいな。
か ジョーは確かに合ってないような。なんか作家方面に寄せすぎて、若草物語のジョーじゃないような気がするんだよなー。今回いいなって思ったのは、小さい時の感想はジョーひとりの物語だったんですよ。それをみんなにスポットライト当たってて、ある程度納得させる作りであるということ? メグは私の中ではほんと一番気の毒で、それでいいのかなって。
み そういう価値観に染まりきってるわけでしょ?
か そうなんだけど、そう書かれてるから読んでてあんまり魅力的じゃなかったんですよ。だけどエマがやってるから魅力的になってるのがいいって思ったんですよー。
み なるほど。でも、ほんとに稼ぎのない家庭教師と結婚して幸せなの、みたいなのが、もうちょっと、何かほしかった。
か いやこの時代なんだから頑張ってるんですよ、かなり…。
み でもドレスを、お金ないのに見栄で買ってみたり、優柔不断だし。後から後悔して返したり。
か そういう時代なんだもんー。映画見て、結婚もそうだし、この時代に家族主義になるのしようがないよなって、納得も私の中で。
み 家族はね。ローリーの家も、娘なくなってたとかストーリーもあるし。
か そこがやだって感じじゃなくて、その世界観だからそうだろなってなりますよね。みんなにスポットライトあたってるし、よき…。
今『若草物語』をなんでわざわざ映画で作ったんだろう
変わってないところもあるって感じられる面では、考えさせられるなと思った
み でも今『若草物語』をなんでわざわざ映画で作ったんだろう。アカデミー賞の候補にまでなって、まあほとんど何も取らなかったけど。この間見た「チャーリーズ・エンジェル」もだね。
か 確かに今これ見るなら「チャーリーズ・エンジェル」見ろよって話か。
み あっちも見てほしい!ていうかあれで対談したんだよね、そのあと緊急事態宣言で映画館閉まっちゃったからアップしづらくなっちゃったけど……『若草物語』はなぜ今?という疑問。
か でも思ったのは、あんまり変わってない面もあるわけじゃないですか。今だって同じ思いをしている人もいるだろうし、変わってないところもあるなって感じられる面では、考えさせられるなと思った。
み 読んだ人が多いんだろうから、これはこういうことだったんだって。全然関係ない話をするよりは、入りやすいみたいなところはあるかもね。
か 家族大好きな感じとか。やっぱり小さい時、なんなんだろうって気になって覚えてるんですよ。
み お父さんも牧師さんで、南北戦争で北軍に行ってる。
か リベラルで、みんな教育されて輝いてる。困難があって結婚に流れなきゃいけない、そういう価値観があるって知った。私の母の世代だと憧れで読めたはずなんだけど、そういう感じは自分にはなかったような。でも女の人だけが主人公の話って小さい時あんまりなかったし。だからやっぱり興味があるし、うれしい。『十五少年漂流記』とかより自分だと思って読めたような気がします。
み そっか。私はわざわざ女性が主人公のものを読んでなかったかも。
か もちろん十五少年は面白いんだけど、どっかであれ自分と違うってひっかかる気持ちがあったんだと思う。『小公女』みたいに見初められて、とかいうのでもなく、『若草物語』は姉妹4人が時代の中で試行錯誤しながら自分で選ぼうってがんばってるから、フェミニズム的な物語ではあったはず、という気はする。それでいろんな人が読んでいて、誰がどうだって言ってるんだと思うんだけど。
み そうだね。読んだほうがいいかもしれないけど、『若草物語』ってタイトルだけで毛嫌いしてたかも。原題はlittle womenでしょ。若草って何?
か 日本の、タイトルださくなる問題! 子どもも人間であるって言ってるわけなのに、それを…。
み 『長くつ下のピッピ』読んだ時点で、小公女だの、若草だのってなんだよ、みたいな。
か ピッピがすごいのは、親が出てこないんですよね。なかなか女の人の物語でないと思う。あれは憧れますよねー。
み 木の上住んでるしね。船乗ってどこ行くの〜、みたいな。あれだけで十分だったのかも。
か あれだけだと思うんですよ、あんな物語。
み まあ読んでみますよ、でも名前はすごい覚えてる。メグ、ジョー、ベス、エミリー。
か え、すぐ出てきて、実は読んでるんじゃないですか?
み 読んでるのかなー、全く覚えてないけど。ジョーって男っぽい感じするけど女性の名前なんだって。ベスは死んじゃうし。
か なんか、ベスの死に方美しかったですね。読んだときは文字だからなんかふんわり弱って亡くなってて、人間はそうやって死んじゃうのかって思ったんだけど、やっぱり映画でもふわって亡くなってた。
み でもジョーが、私が支える、私が大黒柱になるってずっと言ってるのなんで?
か 小説読んでた時の記憶では、やっぱりお金はなさそうだった。ジョーにだけかかってるってわけじゃない気がするけど、そう思ってるだけで。
み でも4人もいるし、長女もいるのに。なんでそう思ってたの?
か そういう性格?独りよがりな感じ?
み そうなの?
か と、いう記憶?わからん!
(追記)
あまりにわからなすぎて後日『若草物語』『続・若草物語』読みました!想像よりは楽しいお話だった。確かに女の子4人が主人公で、それぞれ個性的で、その後の人生も描いていくって、150年前の児童文学としては珍しかったのかもしれない。(か)はジョーの物語って言ってたけど、ちゃんと4人それぞれがフィーチャーされていて、読者がお気に入りに投影して読んでいたんだろうなと想像できる。なぜメグはさっさと結婚したのか、ジョーが大黒柱になろうとしてたのなぜ、などの疑問も時代背景とともに読めば納得できます。で、映画で、現代にも受け入れられるように工夫してるのもよくわかった。いちばん衝撃だったのは最後のシーン、ジョーがメグの男女双子の子も行けるような学校を作るというところ、原作のセリフは「私、男の子たちのために学校をつくりたいと思っているの」。マジですか!ここがいちばんいい改変だったかも。(み)
ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語
原題 Little Women
脚本・監督 グレタ・ガーウィグ
製作年 2019年
製作国 アメリカ
上映時間 2時間15分
https://www.storyofmylife.jp
か=かとうちあき(野宿野郎)
苦手なジャンルは、ホラー、アクション。若草物語、えー、そうだったのー! 記憶力がほしい……。最近、久しぶりに映画館で「ダンシング・ホームレス」とフレディ・M・ムーラーの三部作を観ました。
み=宮川真紀(タバブックス)
好きなジャンルは、SF、ファンンタジー、社会派ドラマ。追っていた韓国ドラマをどんどん見終わってしまい、悲しい……映画は「はちどり」を見にいく予定だけど、行けるのか!
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