やっぱり映画なんだけれども

たかが映画なんだけれども 第13回「愛と法」 

(2018/10/25)


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 誰にも頼まれてないけど熱く話し合う映画対談、第13回は「愛と法」 。衝撃だった『新潮45』のLGBT非生産性発言が、まさかの開き直り特集、そして雑誌休刊となんだか乱暴な展開でもやもやする…と思っていたところで知った「愛と法」は見るしかない作品。マイノリティ、人権、多様性などの社会問題とともにパートナーである2人の関係がもう…見終わってぽわーんとした映画でした。

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映画もパンフレットもビジュアルがいい

 

ものすごく仲よくて、いい関係
この映画を観るたびに、「ほんとにいい子だなって思う」って!

み せつなかった…。あの2人がどうやって知り合ったんだろうって、出会いにすごい興味を持った。弁護士同士でゲイでって、相当見つけるの大変じゃないかと思って。パンフレット見たら、もともと高校が同じで。

か なれそめとかは2人で出した本に書いてあるみたいだから、読みたいですねえ。出会いから全部。どっちかというと同じ職場でってのはありそうだけど、高校が同じっていうのがすごくないですか。

み 学年は違うのかな。大学が同じ京都大学で、カズが農学部、フミが法学部。でも別の仕事をしてたのを辞めて、2人で弁護士目指したらしい。映画でもフミが仕事辞めて何もしなかった、寝てただけだって言ってたよね。それでも2人とも2年ぐらいで司法試験受かったって、すごくない?

か ひゃー、すごい。

み とにかく、すごいいいパートナー。ただでさえ相手見つけるの大変じゃない?しかもちゃんと寄り添える相手を。どうなの??

か うーん。いやー同性同士だって男女だって、なんにせよ寄り添うのは大変ですよ。

み また自分に結びつけて! いやそうじゃなくて、出会いよ出会い。よくゲイの人が出てくる映画とか見るとハッテン場に行って探したり、ゲイ専門の出会い系サイトにみんな登録してるとかで、相手見つけるの大変なのかなって。カズとフミは弁護士同士で、すごいきれいなマンションに住んでて、幸せそう。

か 安定してそうですよねえ。

み 事務所も2人でやってね。結婚して8年くらい?夫婦だったらちょっと倦怠期だったりしそうだけど、ものすごく仲よくて、いい関係。

か 今日舞台挨拶にカズさんが来られてたんだけど、フミさんのこと、「この映画を観るたびに、『「ほんとにいい子だな」って思う』って!

み ラブラブ!どっちがどういう立場なんだろう。見るときによって違うけど、フミの方が保護者っぽくもあるし。

か たしかにケアしてる感じがある。

み ゲイの人たちって役割はあんまり決まってないのかな。

か どうなんだろ。決まってる感じが好きな人たちもいるだろうし。同性・異性カップル問わず、それぞれでしょうしねえ。

み そっか。フミ、めっちゃ泣くよね。何回も。また泣いた!って。

か なんかいいですよねえ。今日カズさんが話してたのが、自分は出たがりだからすぐOKしたけど、フミさんは映画に出ると弁護してる人に迷惑がかかるんじゃないかって悩んでたって。でも監督に意義があるって説得されて出るって決めてからは、このシーンは使っちゃダメとか言わないことにしたんだって。だから泣くこともなんでも隠さずに見せたのかなって思った。それで人柄のよさもよく伝わるのかなって。

み フミさん、そんなにおとなしいキャラにも見えなかったけどね。

か 気難しいとも思わないし。すごく優しくっていい人。

み カズがライブハウスで歌ってるときに、めちゃめちゃ泣いてて。口ずさみながら。

か かつ、カズのお母さんが見守ってるという。あのシーンいいですよね。

み つらいことがあるんだろうなっていうのも想像できるし、お母さんがなんとも言えない表情で、声をかけるでもなく見てるっていうのもね。そんなの普通の夫婦だったらさ、相当すごいよね。旦那さんが相手に対する思いを歌って、妻が泣きながら見てるとか。

か さらに親が心配そうに見てる。最高だ。あと、あのPV作ったところもめちゃおかしかった。

み そう、最初預かった高校生の子、カズマに相談してたじゃない。「重いカバン持つのどうかな」とか。だからカズマが出るのかなと思ったら全部自分が出演するんだ!って(笑)。

か で、PVできたあとに二人で楽しそうに見てて。

み 二人っていうかカズマもね。あの二人がイチャイチャしてるの、どう見てるんだろう。でも最初から受け入れてたって言ってたよね。

か 二人の関係はいいなって思ってるんでしょうね。PVにはニヤニヤしてたと思うけど。

み よくやるよ、みたいな。

か 見てるこっちもニヤニヤしちゃうけど、いいシーンでもあるし。なんか、泣けるんだか笑えるんだか、困っちゃう感じがよかった。

 

二人がマイノリティに必ず寄るっていうのが鮮明 
変な偏見もなくて、ふつうにやってるかんじがいい


み マイノリティだからなのかもしれないけど、受ける案件も弱者の側の弁護が多い。無国籍、性表現、君が代問題、とか。途中「LAW VS CHILD」とか文字がパッと出てきて、あ、確かにVSだなって、わかりやすかった。

か 最初戸籍がなくてBさんってテロップが入っていた人が、戸籍を作れたあとに名前が出るじゃないですか。あのちょっとこにくらしい演出にぐっときたりする。もう一人まだない人はAさんのままで。戸籍がないのって子どもの頃だけで、どこかで解消されてゆくのかと思ってたんですけど、大人になってもなんですね。

み 彼女は、離婚して再婚していい期間より前に生まれたからってこと?

か DVだったから出すとばれちゃうとか、夫との子どもになるのが嫌だし怖いとかかなあ。

み 学校はどうなの?学校に入る前、お知らせが来たけどあれは何に対してくるんだろう。

か ですよねえ。無戸籍者の問題とか、全然知らなかったって気づきました。

み フミの携帯に被害者の親から連絡があって「国籍はどこだ」って言われたとか、弱い立場同士が争うのがしんどい、とかハッとする。

か 「もっと自分ができればいいのに、スーパーマンになりたい」って言うのが、また。

み 泣いてるところでしょ?そんなー、がんばってるじゃん、できてるよ!って思う。

か 二人がマイノリティに必ず寄るっていうのが鮮明で。流行りの両論併記ではなくって。観てるほうもストレスないというか、混乱せずに観られる作品ですよね。

み 弁護する方もされる方もマイノリティ同士だから、ゲイだからって変な偏見もなくて、ほんとにお世話になります先生、ってふつうにやってるかんじがいいなと思った。たくさん案件を抱えてるんだろうけど、2人で話もできるだろうし。

か 仕事の悩みとかも。

み ねー、いいよね。ちゃんとお金とかもらえてればいいけど。「うちは一番最後でいいです」とか言ってたからちょっと心配だけど。でも事務所も広そうだったし。

か 事務員の方、2人いたっぽいですよねえ。

み 毎日12時くらいまで働いてて忙しそうなのに、朝お弁当作ってね。

か とんでもない能力ですよ。

み 一人暮らし始めたカズマの分も作ってあげててね。フミさんが教えてくれるって、自分で彼女に料理作ってたしね。

か キムチ鍋作ってましたよね。

み そうそう、要領よく肉を並べてるところが、フミさん仕込みなんだなと。幸せな家族というのは弁護士さんたちのこと、僕も結婚したいって言ってたのが、ぐっときた。

ことさらドラマチックにしないで淡々と撮ってる
この映画ははっきりと人に寄っていて、そこから見えてくるものを描いている

み ドキュメンタリーやるのって今回初めてだよね。

か そうか、難しいからかでしょうか。わたしはバンクシーのが観たいって言ったんだ。あと沖縄のやつ。

み 「沖縄スパイ戦史」?あれよかったよ!

か わたし見逃したー。やるっていってくれたら絶対観たのに!

み あれこそ難しいよね。「愛と法」は現代だし、想像できる部分もあるけど、沖縄戦は知らなすぎて。沖縄、スパイ…スパイって何?って、情報が多すぎて。「乱世備忘 僕らの雨傘運動」もよかったな。

か ドキュメンタリーとしてはわりととっかかりやすいというか、観やすい映画でしたよね。

み 最近の若い監督のは撮り方がきれいっていうか、感覚がさらっとしているというか、ことさらドラマチックにしないで淡々と撮ってる。

か 雨傘もそうだし。

み 今日のもそうだし。

か あ、でもドラマチックではないけど、泣かせどころっていうか決めどころみたいなのが、個人的にたくさんあった。あー、泣かされるー、みたいな。

み でも今日のもテーマ的に「クローズアップ現代」とかでも取り上げそうだけど、クロ現てすごい不幸感出すじゃない。こんな大変だとか暗〜く作ってて、それはすごい気にくわない。

か あー、たしかに。ニュースだから? 現象に寄るか人間に寄るかもあって、この映画ははっきりと人に寄っていて、結果としてそこから見えてくるものを描いているから、また違うんでしょうね。

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言い争いしたあとにフミがカズの頭クシャってシーンに、きゅん… イラスト み

 

愛と法

監督 戸田ひかる
製作年 2017年
製作国 日・英・仏
上映時間 94分
http://aitohou-movie.com/#pagetotop

STORY

カズとフミは大阪の下町で法律事務所を営む弁護士夫夫(ふうふ)。仕事も生活も二人三脚のふたりのもとには、全国から”困っている人たち”が相談にやってくる。セクシュアル・マイノリティ、養護が必要な子どもたち、戸籍を持てずにいる人、「君が代不起立」で処分された先生、作品が罪に問われたアーティスト…。それぞれの生き方と社会のしくみとの間で葛藤を抱える人たちだ。ふたり自身も法律上は他人同士のまま。そんなある日、ふたりの家に居候がやってくる。突然居場所を失った少年・カズマくん。三人の新しい生活がはじまった…(公式サイトより)

 

か=かとうちあき(野宿野郎) 苦手なジャンルは、ホラー、アクション。いま観たいのは「太陽の塔」です。面白いのかなー。どうですか。

み=宮川真紀(タバブックス) 好きなジャンルは、ホラー、SF、社会派ドラマ。「1987 、ある闘いの真実」よかったー。韓国の翻訳本を出すこともあり春からハングル講座聞いてるんだけど、セリフはほぼ理解できません…

 

 

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