たかが映画なんだけれども 第24回「アナと雪の女王2」
(2020/2/14)
誰にも頼まれてないけど熱く話し合う映画対談、第24回は「アナと雪の女王2」。続きものとしてはよくできてる、気が利いてる、成長が見えた、といつもながら勝手に話しつつ、「でもプロポーズはない!」としつこく食い下がる1名のせいで、すべてがその話題に戻るという…めでたしめでたし、という終わり方の呪縛なんでしょうか…
STORY
深い絆で結ばれたアナとエルサの姉妹は、王国を治めながら、失われた少女時代を取り戻すかのように、気の置けない仲間たちと平穏で幸せな日々を送っていた。しかしある日、エルサだけが“不思議な歌声”を聴く。その歌声に導かれ、仲間のクリストフやオラフと共に旅に出たアナとエルサは、エルサの持つ“力”の秘密を解き明かすため、数々の試練に立ち向かう。果たしてなぜ力はエルサだけに与えられたのか。そして姉妹の知られざる過去の“謎”とは? 旅の終わりに、待ち受けるすべての答えとは――。(公式サイトより)
「国を治めるのは結婚してる男女じゃないとダメなんだってメッセージを」
「えー! 最後数秒くらいで違うってわかる」
か これひとりで観るのもなんだなって、強引に友人(女性・独身)を誘って観たんですよ、友人は「1」も見てないのに。その感想が「1観てないからよくわからん」ってのと、「結局は国を治めるのは結婚してる男女じゃないとダメなんだってメッセージを受け取った気がする」って感じのもので。
み えー!ちゃんと見てよ、最後数秒くらいで違うってわかるじゃん。
か まあ一緒に出てこないのはホッとしましたよー。でもあれ気づくのは、そういうのをすごく気にしてる人だけじゃないかなあ。
み ふつうは最後は王様と女王様セットで出てきてめでたしめでたしで終わるから、あ、違うんだ、アナは一人でエルサの跡を継ぐんだって。要所要所そういうところが気が利いてるなって思ったけど。
か えー、結婚とかいらなかったですよー。
み なんでよ、アナは彼氏ほしいみたいなタイプでしょ? 逆に、途中それどころじゃない、みたいになったのはすごいよかったけどね。クリストフ途中から全然出てこなかったじゃん。
か でもいいところで助けにきたじゃないですか。あれもいらないのに~。
み 恋愛パートのキモはクリストフだよね。冒険の最初に馬車に乗ってるとき、エルサとオラフが寝ちゃって「私たちはなにする?」ってアナから誘ってるのに、クリストフはまじめくさって俺からプロポーズせねば!って頑なになってるのがおもしろかった。あの求婚するぞーって歌うミュージックビデオみたいなのがおもしろかったよ。アホみたいに描かれてて。
か うん、古臭くて。
み 求婚する気満々でいたら、長老の女性がアナもう行っちゃったよって(笑)
か 治めてるのが女性なんですよね、かっこいい。目配せは効いてるんだよなー。
み レビューで見たのは、すごいスピリチュアルだとか、なんの説明もなくエルサが森へ帰って国をアナに押し付けて、っていうのがあって面白くないのかなと思ったけど、見たら全然ちゃんと説明されてると思ったけどね。
か 私はエルサが森に帰ってよかったとまず思ったけど。
み でも、結界の中心みたいな役割になったわけでしょ?今よりもよっぽど重要な役割なんじゃない?
か そうなんですよー、人身御供ですよ、かわいそうだよよく考えたら。でも王国にいるより馬に乗ってパカパカしてる方がいいよ。
み いやいやパカパカしてないでしょ、何が起こるかわかんないんだから中心にいて収めなきゃいけないんだから。
か そんなことを気にしてほしくない、そんなこと思うと暗い気持ちになるよ。だから独り身のやつは森に追いやって、国はパートナーを持つ者が収めるんだって思った友人の気持ちはわからなくもない。
み ええー、全然思わない。アナだってプロポーズ受けて「やったー」とは言ってたけど、それどころじゃない、私これから国を収めなきゃいけないんだからって雰囲気だった。重々しく「待ってたわ」って感じじゃないじゃん。
か そうか、もっと気軽にとらえればいいのか。
み 気軽にっていうか、アナもただ恋に恋してる女の子じゃなくて大人になってた。私が助けなきゃって、あんな岩場をポンポン飛び越えていって、溶けちゃったオラフをカバンにちゃんと入れて連れていったやさしいところもあるし、機転も利くし、将軍も説得して味方につけて。
か ちゃんと王の器があるっていうことを示してた。これはいけるぞって。こうして話してるとうまくできてるってこと?私は結局プロポーズが気に食わないだけ?
み あそこでまだしなかったり、断ったりしたらめんどくさい、また説明しなきゃいけないよ。
「水が記憶をって、そんなこと言っていいの?って気持ちにはちょっとなる」
「でも、おとぎ話だし」
み いろんな先行作品へのオマージュがすごくあるよね。
か もののけ姫感がすごくあった。ナウシカって言ってる人もいました。
み あー姫ねえさま感あったね。戦う王女とか。長老のおばあさまとか、将軍とか。なんかSF感もあるし…スター・ウォーズ的な、フォース?みたいのもあるし、きょうだいの話だし。
か 水の記憶がキーワードになるじゃないですか。それで氷の世界だから水を伝わって届いたのかなと私は思ったんだけど。水が記憶をって、そんなこと言っていいの?って気持ちにはちょっとなる…。
み でも、おとぎ話だし。
か そう、がんばってそうだって思ったんだけど、ちょっとえ?っても思いませんでした?
み でもおとぎ話とか神話とかと思ってみれば、そんなのいっぱいあるでしょ。アラジンだって飛ぶし、魔法のランプだし。
か おとぎ話はこうならざるを得ないってこと?あ、パンフレットに、おとぎ話のアナと神話のエルサって書いてあります。神話は普通の舞台で魔法を持ったキャラクターがいて世界を担う重圧に耐えている、おとぎ話は魔法の世界でごく普通のキャラクターで困難を乗り越えないといけない。神話は厳しい真実についてのもので、おとぎ話は可能性についての物語。両方使った話だって。
み ギリシャ神話とかとんでもない話だもんね。
か でも「水は」って言われるとえーと思っちゃうのはなんなんですかね。まあ氷だから水なんですよね。その世界観ではそうなんだよって思うことにした。
み あの氷で過去のシーンが出てくるのって、ディズニーランドのアトラクションみたいだった。
か 確かに!ザ、ディズニーランドですね。
み あとアクションがいいよね、アニメだからなんでもできるんだけど、結構重要。
か そう、あんな細い体でなんでって思うけど。その辺は楽しかった。
「最後はやっぱりプロポーズで終わるのねってなっちゃう」
「プロポーズされたからアナちゃんよかったねって思わないんじゃ?」
か ストーリーは面白いんだけど、感情移入できるところはあまりない、身近じゃない。
み 1は、女性もありのままでいい、って環境は全然違うけど感情移入しがちな要素があったかもね。
か 映像も歌もすごかったし。そのカタルシスを期待してたからそういうのはなかったなって、私の不満はそういうことか?
み まあ、ルーツ探しと今後の生き方みたいな話?そういうのはあんまり好まれないからね。今の自分みたいな方がみんな好きだから。
か 確かにルーツというのは、なかなか。でもするともう気持ちストーリーがわかりやすくてもいいんじゃないですか?
み 確かにね。「ありのーままにー」でわーっとなった女の子たちは「エルサどこ行っちゃうの?」って思うかな。でも最後はみんなハッピーでよかったー、かっこいいし、ってならないかな。
か だからさー、そうすると最後はやっぱりプロポーズで終わるのねってなっちゃうじゃん。
み でもあれでプロポーズがあったからアナちゃんよかったねって思わないんじゃない?
か ああいうかっこいい女性にサポートしてくれる男の人がいるっていうのはいいんだけど。私は友人の「独身は森へ行けっていうのか」っていう感想を聞いて、そういうメッセージを気にしすぎてるのかなー。
み えー。たとえばエルサに彼氏的な人がにいても、別に森に行ったんじゃない?
か そうなの。王国だって収めたくなかったでしょ。この能力を活かせる、人のためになるならって責任感でやってるけど、そんな屈折がなかったらきゃっきゃ雪の中にいたかったかもしれない人間が。
み きゃっきゃしてなかったじゃん、それは誰にも迷惑かけないからやってただけで、一人が楽しいわけじゃないでしょ。
か でもまだ20才くらいなんだから数年やってたっていいじゃんー。
み 数年もそんなことやってたら、それを今度攻撃とかに使うようになるかもよ、別の話になっちゃう、あのエルサが!とか。だから謎の声に呼ばれてってくらいでちょうどいいんじゃない?ラストも落としどころもいいと思ったけど。
か ふーん。わかりました、そういうことにしときます。
み なに!言いたいことあればどうぞ!
か いや私は、とにかくプロポーズが気に食わなくて、そしたら友人がそういうこというからあれもこれもやべえって。1を見てたらそういう感覚にはならないんだけど、意外とそうやって見えるのかなってさあ。
み 2だけを見て?プロポーズに重きを置きすぎなんじゃない?
か それはそういう物語が多いから、その反転でおちょくったりじゃなくて、やっぱりそれに乗っ取ってるんですよ。
み え、乗っ取ってなくない?めちゃおちょくってるじゃん。
か 途中まではね。だからプロポーズしなきゃいいじゃん。
み アナはがんばってる時、全然彼に助けを求めてないし。
か でもやっぱり最後めでたしめでたしで終わらせがちなのってさー。
み めでたしめでたしじゃないじゃん、最後目配せしてるし。
か 目配せが弱いってー。
(延々と続く)
アナと雪の女王2
原題 FROZENⅡ
監督 クリス・バック、ジェニファー・リー
製作年 2019年
製作国 アメリカ
上映時間 1時間43分
https://www.disney.co.jp/movie/anayuki2.html
か=かとうちあき(野宿野郎)
苦手なジャンルは、ホラー、アクション。国立映画アーカイブの特集上映「戦後日本ドキュメンタリー映画再考」で念願の「山谷やられたらやり返せ」と「ゴット・スピード・ユー!」を観ました。最近公開のドキュメンタリーだと「だってしょうがないじゃない」「さよならテレビ」が面白かったです。
み=宮川真紀(タバブックス)
好きなジャンルは、SF、ファンンタジー、社会派ドラマ。「パラサイト」祝アカデミー賞4冠!めちゃ盛り上がったけど、韓国の人からいろんな話を聞いてなかなか思うところがありました。アカデミーにまったく無視されてた「ハスラーズ」、見たい。
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