やっぱり映画なんだけれども

たかが映画なんだけれども 第15回「パッドマン」 

(2019/1/18)

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 誰にも頼まれてないけど熱く話し合う映画対談、第15回は「パッドマン 5億人の女性を救った男」 。妻のために生理用ナプキンを作ろうと奮闘し成功したという実話を元にしたインド映画。ストーリーも登場人物もいい、グッっとくる場面もあるしおおむねいい、が!「わかるけどしかし」という意表を突くかとうポイントに新年早々喧々諤々…誰にも頼まれてないのに…でもおすすめの1本です!

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手作りナプキンを葉っぱに包みお花を飾って妻にプレゼント…そこもかとうチェックが

 

 

「いかに今まで気づいてなかったかっていう衝撃ですよね」
「男がいばってて、女の人が尽くすのが当たり前だったら、生理のことなんて気にしない」

 

み ラクシュミは奥さんのガヤトリが生理になると部屋の外に出なきゃいけないってことにショックを受けたんだよね。でもあの家も女系家族でそういうの見てたはずだよね。

か だから、いかに今まで気づいてなかったかっていう衝撃ですよね。あなた妹もいるでしょ? 見えないくらい隠されてたってことで。

み それですぐに綿を布で包んで作ってみたり、よく行動したなって思った。

か でもさー「これで清潔だよ」って言っても川の水汲んで作ってるじゃないですか。それ、ダメだから!

み 葉っぱで包んだり?かわいらしくね。

か そもそも葉っぱで包むなよって。

み あー。接着剤とかもヤバイよね。

か 体に悪い。ツッコミどころが多すぎて。あんな池のほとりで実験しなくたって!

み まあそれは映像美ってことで。

か 自分で実験してみればいいって思いついたのはいいけど、つまり生理というものが何もわかってないうちにナプキンを作ろうとしてるじゃないですか。まず人に聞いたり、どんなものかを確認してからじゃないと、どれくらい出るものなのかとかもわかんないじゃないですか。なのに見た目と同じようなもの作ればよしって。全然できる人じゃなくて、この人がまさかパッドマンになるとはって思った。

み そりゃあれは綿に見えますよ。だって、セルロース使ってるとかわからんでしょ。

か でも妻に渡す前にちょっと水かけてみたりすりゃいいじゃないですか。もう前半ハラハラしちゃって。あと妻への愛情表現で、後ろから目隠しするじゃないですか。あんたそういうことしたら怖いんだからやめなよって。あれ、いい人だけど、何にもわかってないやつみたいな描写が秀逸ってことなんでしょうか。

み ああいうイチャイチャするのはないのかな、インドでは。

か 今までのインド映画だともっとキュンとするっていうか、ロマンチックにああいうシーンがあったけど、これはミュージカル要素が少なくて、もっと現実寄りだから、ビクッとしたのが、ラブロマンス的じゃなくて、本当に怖がってるみたいで。

み でもインドの一般的な愛情表現がわからないけど、結婚してイチャイチャしてるのが珍しいんだとしたら、奥さんの生理を気にかけるっていうことになったのかなって思った私は。男がいばってて、女の人が尽くすのが当たり前だったら、生理のことなんて気にしないのが普通でなわけでしょ。

か 当然だ、みたいな。確かに。

み 「そんな汚い布使ってるのか!」って驚いて、それがナプキン作りにつながったわけだから。

か でも愛情が、独りよがりすぎるよっていうところがずっとあるじゃないですか。

み だけどリアルな話をモデルにしたわけでしょ。そんなことをした人がいないから、尊敬された。

か 学校とか行ってない一般庶民の中でそういう人が出てきたってことですよね。

み 途中で女子医大生に手作りナプキンを試してくれって頼みに行って、でも彼女たちは医学生だから「そんな成分が何かもわからない、製造者もわからないのを使うのなんてダメだよ」って。それは正しい理解なんだけど、その彼女たちはナプキン買えるけど、全く使えない人たちの格差が激しすぎて、中間をつなげる人がいなかったっていうことだよね。

 

「まさか、「ボヘミアン・ラプソディ」とつながるだなんて!」
「両方とも彼女たちがいなかったら、絶対に成功してなかったよね」

 

み 私これを大晦日に見て、「ボヘミアン・ラプソディ」をお正月に見たんだよね。それでどっちも居場所がない男が下積みも挫折もいっぱいあって、でもいい女友達を得て成功する話だなと。両方とも恋は実らないけど。フレディは元妻だし、「パッドマン」のラクシュミはビジネスパートナーのパリー。フレディの元妻なんて妊娠してるのに「あなたが心配なの」って雨の中車でわざわざ来たし。

か いい人、いい人。

み パリーは身を引いて応援する。すばらしい女友達の映画って、続けて見てそう思ったよ。

か まさか、「ボヘミアン・ラプソディ」とつながるだなんて!

み 両方とも彼女たちがいなかったら、絶対に成功してなかったよね。

か もっと早くダメになったかもしれないですよね。自分を保てず、売れなかったかもしれないし。

み 天狗になってダメになった時に釘を刺しに行くのがえらいなって。「パッドマン」も、成功して国連で素晴らしいスピーチをして、その後うまく行くのかって思ったら奥さんから電話が。

か えー、うまく行くはずないですよね、あの流れで。

み でも電話がなかったら行ってたでしょ。もうすでに部屋に行く寸前だったじゃん。

か まあ映画だからなあ。

み でも映画としてよくあるなと思いつつ、ああーっどっちをとるの?みたいなラブロマンスとしてもいい。あの片言英語の「リングリッシュで気持ちを伝えて」って彼女が言ったら、僕の1番はパリー、2番はパリー、3番はって10番くらいまで言ってて!

か うううっ、いいシーン。本当だ。「私はパッドマンを生理用ナプキンでつながった3人の人間がからむラブストーリーだと思って作りました」ってパンフレットで監督が言ってる。ラブストーリーなんだやっぱり。でも私はなんなんだってモヤモヤしてて。パリーと出会った後はいい人になって、あまりダメな行動もしなくなって、いい人と出会って人は変わるっていうことだとは思ったけど、対等に接しないといけないと思う女の人だと態度が違うじゃねえかって。だってパリーは堂々としてるし、自信もある、すごい人だって思うからあんな感じになって、だからあれで村に帰ったらまたダメなやつになるんじゃないかって。

み え??

か 妻とだったらまたダメなやつにこいつ絶対なるって。どうすか、この考察。

み なんでそうなる! だから成長してるんでしょ?

か いや、成長じゃないんじゃないかって。

み えーーー! じゃ、じゃあわかった、かとうが想像する結末、こうなったらいいなっていう結末はどんななの。

か 結末はいいっすよ、そりゃ帰ったほうがいい。でもいい人間になってほしいけど、意外と天狗に……

み 天狗になったほうがいいの? 面白いの?

か なってほしくないけど、なるんじゃないかって。また「おお、この愛する妻のために何かを作らねば、ひー!」って。だって妻のガヤトリは周りから離婚しろって言われても待ってて、やっと電話かかってきたら夫は「製品ができた!」ってことしか言わなくて。そりゃ先方にとったらできたのがうれしいだろうけど、何も言ってくれなくて、あの人は何も変わってないってショック受けてた。それは成功したから帳消しになるものではなくて、デリカシーの問題なのに、そこが何も解決してないのに成功したからありがとうってなるかって。

み そんなことないでしょうよ、パリーに行かずに妻に戻ったわけでしょ。

か それもいっときは妻のためにやってたけど、もうダメそうだってわかって、みんなを幸せにするんだって切り替わったじゃないですか。電話かかってきたからやっぱり帰らなきゃってなったけど、そこまでスコーンて抜けてたじゃないですか。そんな感じなんですよ!

み そりゃそうかもしんないよ、仕事が軌道に乗ってたらそっちにも行くでしょうよ。もうダメなんだって切り替えてたかもしれないけど、でも電話が来たらやっぱりって手を離して妻の方に行くって、いいじゃない別に。帰ったらわだかまりもなく普通の夫婦に戻ってたわけでしょ。

か うーん。

み じゃ、どうなればいいわけ!?

か いやまあいいんだけどさ。いいんだけど、ちょっとえらそうなやつになりそうな予感が。

み えらそうになるんだったら、特許料で儲ければいいじゃんて言われてそれやってたはずだよね。でもそれをせずに、女性に機械を売って自立を促して自分は儲けてない。

か まあね。パリーと一緒にいるときだけいい感じなんですよ、あの人は。

み 確かに大きいきっかけになりましたよ、彼女は。でもそのあとで、成長したんじゃん。

か したのかなー。

み なんでそんな……男嫌い、ミサンドリー?男が何をやっても気にくわない。

 

「私がずっと引っかかってるのは目隠し」
「女の子もそんなことやられる世界で生きてきてないから、ビクッとするんでしょ?」

 

 み じゃあさ、女性が主人公だったらうまく収まるってこと?

か まあそれはありえないだろうからなあ。

み そうだよ、インドで女性があんなことしようとしたらもっと叩かれて、何も進まずに終わってた可能性高いと思う。この人だって散々コケにされて、村八分状態で追い出されたでしょ。それでもやるって世間体とか気にせずやったのは、そこはちょっと感動したな。

か 妻にももういいって言われてるのにね。

み そうしつこくしつこく。それは妻のこともあるけど、疑問を持ったらそこに突っ走るしかないっていう。でもビジネスってそこが原点だなって私は単純に思ったね。そこまでのパッションを持って、何度も何度も挫折して。ビジネスコンテストで賞とったって村で歓迎されたけど、ナプキン製造機だってわかったら「こんなもので!」ってさーっとみんな離れていって。

か あんなお墨付きもらってもやっぱりダメなんだっていう。

み あそこまで叩かれたらめげそうなもんなのに。でも電話で海外からサンプル取り寄せるのに、資本金がいっぱいあるみたいに言ったり、ユーモアもあってよかった。夢がある。最初に始める人は、できるわけないとかアホだとか叩かれたりするけど、それを経ないと新しいことはできないんだなって、思いました!

か ほんとですかあ?

み そうだよ。絶対言われるもん、そんなうまく行くわけないとか。

か いや、大筋はいいんですよ。苦労してるところをコミカルにしたり激しくしたほうが物語としては面白いわけでしょ。

み もちろんもちろん。

か でもあんたここからかい、ってところが前半あったからついつい。私がずっと引っかかってるのは目隠し。

み そこ!かわいいじゃん。

か そういうのがよかれと思ってる人だから、あれをやるんだろうけど。パリーに対してはそんなことしない気がするし。それかビクッとしないですよ。最初に流れてる歌だってひどいじゃないですか、ああいう意識の延長に目隠しがある。

み 女の子もそんなことやられる世界で生きてきてないから、ビクッとするんでしょ?

か あんなビクッとさせてるんだから、2回目から気をつけろよって。

み その辺の能天気さはあるけどさ。

か あの能天気さが発明につながるって、私もわかってるんですよ。そう言いたいんだろうって。

み 自転車の荷台を座りやすいように作ったり。

か あれはいいですよねー。でもさー。…って、まあ、おおむねいい人だし、面白かったし、勉強になったし、いい映画だったんですけどね。

 

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ナプキンの片側にテープを付ければってアドバイスをくれたパリーへのお礼のメッセージ。きゅん… イラスト・み

 

「パッドマン 5億人の女性を救った男」
監督  R.バールキ
製作年 2018年
製作国 インド
上映時間 137分
http://www.padman.jp/site/

STORY
インドの小さな村で新婚生活を送る主人公の男ラクシュミは、貧しくて生理用ナプキンが買えずに不衛生な布で処置をしている最愛の妻を救うため、清潔で安価なナプキンを手作りすることを思いつく。研究とリサーチに日々明け暮れるラクシュミの行動は、村の人々から奇異な目で見られ、数々の誤解や困難に直面し、ついには村を離れるまでの事態に…。それでも諦めることのなかったラクシュミは、彼の熱意に賛同した女性パリーとの出会いと協力もあり、ついに低コストでナプキンを大量生産できる機械を発明する。農村の女性たちにナプキンだけでなく、製造機を使ってナプキンを作る仕事の機会をも与えようと奮闘する最中、彼の運命を大きく変える出来事が訪れる―。(公式サイトより)

 

み=宮川真紀(タバブックス) 好きなジャンルは、ホラー、SF、社会派ドラマ。試写で「グリーンブック」をみました。バディもの、ロードムービー、テーマは差別。日本人はどう見るのか気になる。

か=かとうちあき(野宿野郎) 苦手なジャンルは、ホラー、アクション。最近みたのは「こんな夜更けにバナナかよ」です。大泉洋すごいなあ。

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