たかが映画なんだけれども 第3回「美女と野獣」
(2017/6/26)
誰にも頼まれてないけど熱く話し合う映画対談、第3回は「美女と野獣」。
大ヒット上映中!「アナ雪」を超える人気!という大型作品に挑む無謀。愛と感動以外のささいな点をしつこく語ることに……
「とってつけたようなポリティカルコレクトネス?」
「ディズニーは理想をどんどん掲げてってくれないと困るから」
み まず、冒頭のお城でのダンスシーンにいろんな人種の人がいて、え?ってなった。あれ18世紀のフランスだよね。その頃に黒人がいるわけないじゃん。いたとしても移民で、奴隷とかでしょ。
か そうだけど、そこは……
み とってつけたようなポリティカルコレクトネス? 時代背景を全く無視してる。例えば「指輪物語」とか「ハリー・ポッター」とか全くの空想の世界だったらいいよ? 中国系のチョウ・チャンと恋に落ちたりしても全然いいけど。
か えー、ディズニーは理想をどんどん掲げてってくれないと困るから、むりくりでもあれはやってほしい。むしろ主人公たちを変えちゃってもと思ったけど。
み 中途半端だよー、見え透いてるっていうか。
か 見え透いたことでもやってほしいじゃないですか。純粋に映像として、いろんな人がいて踊ってるのはきれいだなって。そういうのに美を見出して、ボンクラ王子が呼んでいるのでは。王子が楽しむための晩餐会だから。白人も黒人も両方に美を見出してるのかって。ダイバーシティですよ、いろんな人がいる。
み だからー、あの時代に黒人がいたのかって話だし。封建的で女性の自立なんて認められてない姿を描きたいからあの時代にしてるんでしょ。その設定を使ってるのに、人種だけは違うっていうのは。
か いやーやらないよりやった方がいいんじゃない。ジェンダー不平等だけしか描きたくなくて、ほかは先進的になろうぜって。
み そんなの、例えば小説の新人賞に応募したら、時代考証がむちゃくちゃだって書かれるよ。そんな冒険するなら、お城の中は白人社会のがっちがちのところにして、市民の中に黒人がいるとか、その方がまだわかるよ。それでその人も虐げられてるとか。
か でもそこまで情報量は入れられないんですよお。悲しい。
「なんでみんなそんなにガストン様ってなってるの?反知性主義とポピュリズム」
「そりゃ野獣に恋するしかなくなっちゃう。かわいそう」
か 今回、ガストンの子分のル・フウがいい人になってた。でもなんか違うよって思いながらも、ガストンについちゃうっていう。
み なんでみんなそんなにガストンさまーってなってるの? そんなに民衆がついていくかなって。
か ガストンガールズ。
み ひとこと何かいうと、みんながそうだそうだってなるのが怖い。大した理由ないのに、勢いで松明もって魔女狩りだーって。自分たちのことを否定されるのがやだからそっちについていく、それは風刺なのかと思った。反知性主義とポピュリズム。
か 風刺入れてきた感はありますよね。
み あんな理屈で、人心を惹きつけてるのが変。
か カリスマ性が見えない。でも、ベルが洗濯する機械を発明してたのに、あっという間にみんなが気にくわないって壊して、あれ自発的ですよね。同調圧力なんだろうけど。
み 本を読みたいから発明したんだよね。それが気にくわない。
か 女の子に文字教えたりするのも気にくわない。そりゃ野獣に恋するしかなくなっちゃう。かわいそう。
み そうそう、野獣を好きになるのが必然になっちゃうんだよね。
か この人がどうとかっていうより、この人しかいないだろ他に。かつ恋愛もしないとやっていけない時代だろうし。ベルが今の時代にいたら恋愛なんてしないで好きなことやってるに違いないけど。
み オタクになったりね。
か そうだそうだ。地方にいたら出て行くタイプ。でも逆にアニメ版では、最初もっと野獣野獣してて本とか読んでなかったのに、どこに惹かれたんですかね、ベルは。
み 図書館をくれて、それが重要だったんでしょ。
か 本をこんなに与えてくれたあなた、みたいな。
み ベルが一生懸命読んでるから、野獣も文字を覚え始めて、それで心を通わせ始めてっていうのが感動的なんじゃない?
か そうか、文字を覚えるっていう変化、柔らかい心とか好奇心とかに琴線がふれて、私と同じ!みたいになって仲良くなる。
み ちょっとずつ進んでいくラブストーリーが主軸だったよね、アニメ版は。ガストンと村の人がわーわーやってるのは気がつかなかった気がする。今回執拗に村のシーンが多くて、ラブシーンてあまり残らなかったよね。
か 残らない。怖えー怖えーこの村怖いーって。
み でもあんまりそこに思い入れは持たないかもね、観る人は。やっぱりベルの勇敢さとか。ベルの映画だよね、というかエマ・ワトソンの映画。
か エマ・ワトソンがやってくれたのはよかったですよね。
み エマが強いから、町の人たちがなんか怒ってても大丈夫だろうって。
か ああ、安心感はありますね。
「最後、王子とベルだけ素のままの美男美女に見せるのがやだ」
「元に戻ったとき、あれ野獣の方がよくない?みたいな」
み 最後、みんな元に戻って化粧してたじゃない、最初のシーンと同じように。でも王子とベルだけスッピンなんだよ。二人だけ素のままみたいな。ずるくない? そしたらみんなメイク落として本来の自分に戻ったみたいにすればいいじゃん。主人公だけを美男美女に見せるのがやだ。
か 見た目じゃない、表面だけじゃないよっていうメッセージを込めた、美男美女が主人公っていうのはもちろんあるんですけど、でも今回は野獣がイケメンすぎて、元に戻ったとき、あれ野獣の方がよくない?みたいな。最初化粧してたときは、トンチンカンな王子様みたいでそれはありだったんだけど、スッピンになったとき、あれ?って。
み 一般人みたいだったよね。
か 恋も冷めるんじゃないかって心配した。あれはなんなんですか。アイロニカルな何かがあるのか。
み ないんじゃないの、それは。
か もっと美男の方がいい。韓国のアイドルっぽい感じの人が現れたらほっとするかも。王子、スラッともしてなくて、小さいし。
み 頭大きいしね。
か それでめでたしめでたしに思えなかったのかも。表面で見ちゃいけないよっていう建前上のメッセージを観終わった後に、あれって思ったのが最終的な感想としてはある。野獣のままでよかったじゃないか。
み アニメのときのほうががおーって野獣っぽかったけど、今回そんなに怖くないしね。
か そうそう、最初からいい人。
み そりゃベルだって、最初から本のこととか話せたら楽しくなるだろうよって。
か あんな旧来のギチギチのつらいところに生きてたら。本の話できるだけで惚れちゃうだろうよ。見た目関係ないよ、そりゃそうだっていう、納得感ある映画なんでしょうか。
作品データ
「美女と野獣」(原題 BEAUTY AND BEAST )
監督 ビル・コンドン
製作年 2017年
製作国 アメリカ
配給 ウォルト・ディズニー・ジャパン
ひとりの美しい王子が、呪いによって醜い野獣の姿に変えられてしまう。魔女が残した一輪のバラの花びらがすべて散る前に、誰かを心から愛し、愛されることができなければ、永遠に人間には戻れない。呪われた城の中で、希望を失いかけていた野獣と城の住人たちの孤独な日々に変化をもたらしたのは、美しい村の娘ベル。聡明で進歩的な考えを持つ彼女は、閉鎖的な村人たちになじめず、傷つくこともあった。それでも、“人と違う”ことを受け入れ、かけがえのない自分を信じるベルと、“人と違う”外見に縛られ、本当の自分の価値を見出せずにいる野獣──その出会いは、はたして奇跡を生むのだろうか…?(公式サイトより)
http://www.disney.co.jp/movie/beautyandbeast.html
か=かとうちあき(野宿野郎) 苦手なジャンルは、ホラー、アクション。いま一番観たいのは「SUPER FOLK SONG〜ピアノが愛した女です(が、見逃しちゃいそう……)。
み=宮川真紀(タバブックス) 好きなジャンルは、ホラー、SF、社会派ドラマ。最近のベストは「タレンタイム 優しい歌」。マレーシアに行きたくなった。
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