へんしん不要

へんしん不要〈第9通〉親に認めてもらえなくても 

(2017/12/22)

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イラスト・題字 のむらあい

メールもちい

 住本さんこんにちは、毎日寒いですね。今年の冬はすごく冷えるそうです。餅井は部屋のカーテンを、薄くて丈がメチャクチャなものから厚くて遮熱効果があるものに取り替えました。すごく快適です。なんでもっと早く替えなかったんだろう……。


 ここのところはずっと部屋で書き物の仕事をしています。ずっと、というほどは書いていないかもしれない。けっこう休み休み……。だけどこの間、ふと手帳を見返したら、「9月頑張った、10月も頑張った、11月もすごい、12月もめっちゃ頑張ってるやん〜!」と声に出して叫んでしまうくらい、たくさん文章を書いていたことに気がつきました。えらいな〜すごいな〜と呟きながら部屋の中をぐるぐる回ってしまった。


 正直いろいろな人に心配と迷惑をかけながらではあったし、たくさん書いたと言ってもそれだけで生活が成り立つような量ではありません。かといって積極的に仕事を取りに行くことにも二の足を踏んでしまい、ありがたくも投げてもらった球をどうにか投げ返すのみと、対外的には全然誇れない働きぶりなのですが、1年前、半年前の自分と比べてみると、これはよくやっていると言っていいんじゃないだろうかと思います。体も若干丈夫になったし……。まだまだ直さないといけないところや、身につけなければいけないことは山のようにあるし、それを考えると胸がキューっとなりますが、でも自分的には頑張ったんだよと認めてあげたい。


 今年もあと10日ほどで終わりです。餅井はまだ、実家に帰る新幹線を予約できていません。帰省するのが憂鬱なのです。ご覧の通り自分は大学を卒業しても会社員になることなく、フリーのライターとしてふらふら仕事をしています。毎月実家からの仕送りももらっていて、「立派に働いている」とは言えない現状……。怒られるんじゃないか、がっかりされるんじゃないかという気持ちと申し訳なさ、それから後ろめたさがひたひたと迫ってきて、胃がキリキリしています。


 しかも書いている文章も、両親からしたらあまりおもしろくないジャンルのものなので、掲載された原稿や自分の作ったミニコミなどを見せても基本的には嫌な顔をされます。自分がそれなりに内面を削って書いたものを、親から「よく分からない」「気持ち悪い」と拒絶されるのはとても悲しい。親子といえども歳が離れた他人なのだから、価値観が合わないのは当然、押し付けられる親だって困る、とわかってはいるものの、自分がこれまで感じたことや考えたことを丸ごと否定されたような気がして、ショックを受けてしまうのです。


 毎回「もう絶対に見せないし教えない」と思うのですが、新しい仕事が来たり、書いた原稿がどこかに載ったときは、また懲りずに報告をしてしまう。自分だって頑張っているんだということを認めてほしい。できるなら一緒に喜んでほしい。自分の考えや気持ちを理解して、肯定してほしい。よせばいいのに〜! 親への執着が強すぎるのでしょうか。


 今年はとくに、卒業して1年目の年末なので帰省するのが怖いです。何かしらつらい形でジャッジが下されてしまうような気がする。あ〜帰りたくない。だけど大きな救いは、実家では認めてもらえないかもしれないけど、違う場所ではたくさん認めてもらえているというのを、自分がきちんと受け止められていることです。


 今年は色々な人から忘年会に誘ってもらいました。昨日も忘年会、今日も忘年会です。家族以外の人たちに囲まれた席で「いつも読んでるよ」「餅井さんの文章すごくいいよ」と声をかけてもらえること。まだ全然自信はないけれど、もらった言葉に対して、変に卑屈にならずに「ありがとうございます」「嬉しいです」と答えられること。会ったことのない人からも、ネットを通して記事の感想をもらえること。越えた〆切の数だけ手帳に貼った星のシールを眺めて、「自分頑張ったな〜」と思えること。そういうこと全部を一緒に喜んでくれる人がいること。だったら親から認めてもらえなくても全然大丈夫じゃん! ……と吹っ切れるようになるにはまだちょっと時間が必要だし、もしかしたらずっと吹っ切れないのかもしれませんが、少なくとも世界に拒絶された、みたいな気持ちにはならずに済むと思います。


 実家の両親は褒めてくれないかもしれないけど、自分は自分なりに頑張っている。本当はこうして住本さんに向けて書き始めるまで、私には明るい気持ちでこの文章を書き切る自信がありませんでした。やっぱり本当は全然頑張れていないんじゃないか。帰省したところで、打ちのめされた気持ちになって東京に逃げ帰るだけ。だけど、こうして嬉しかったときの感覚を呼び起こしているうちに、だんだん大丈夫かもしれないという気になってきました。しかも実家にはかわいい猫が3匹もいる。正月だから、普段自腹では買えないおいしいものもある。どうにかこうにか自分を奮い立たせながらですが、とりあえず帰省はしようと思います(いや、もしかしたら逃げるかも)。年が明けたらまた遊んでください。良いお年を。

 もちい

餅井アンナ(もちい・あんな)
1993年宮城県生まれ。ライター。食と性、ジェンダーについての文章を中心に書いています。「wezzy」にて書評・コラムなどを執筆中。食と性のミニコミ『食に淫する』制作。


住本麻子(すみもと・あさこ)
1989年福岡県生まれ。フリーランスライター。文学や演劇などの文化系の記事やジェンダー関連の記事を中心に取材記事やコラム・エッセイなどを執筆している。

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