へんしん不要

へんしん不要〈第21通〉何回でも仕切り直せばいい 

(2019/2/26)

バナー_へんしん不要2_最終
イラスト・題字 のむらあい

封筒_もちい

こんにちは、調子はどうですか? 冬の寒さがここ数日でだいぶ緩まりましたね。もう少しで二月も終わり、やっと三月、やっと春です。寒い時期の憂鬱な気持ちから逃れられる季節が、私はとても待ち遠しい。天気のいい日に外へ出かけて、日差しを浴びながら春の匂いをいっぱい吸い込みたい……と思っている自分は、今まさに昼夜逆転生活の最中にいます。このお便りも、窓の外が青白くなってきた午前五時半に書いています。部屋が寒くて暗い。どうにかして生活リズムを戻したいものです。

年始に放出していたはずの「頑張るぞ」ブーストは、案の定長続きしませんでした。一月の終わりにはもうすでにガス欠というか虚脱状態というか、とにかくだめな感じになっていて、「何もできていないのに、もう一年の十二分の一が終わってしまう」と毎夜枕を濡らすような有様です。

それは月をまたいでも変わらず、二月に入ったころの私は、正直だいぶ焦っていました。文章はうまく書けないし、本を読む気力も湧かないし、バイト先ではミスをするし、ご飯もあまり食べられなくてお菓子ばかり食べているし、夜は眠れないし、頭がボーッとして考え事もできないし、それなのに目はぎらぎら、心臓はばくばくで、今考えてもどうしようもない心配事ばかり心に浮かんでくる。去年から返しそびれているメールが何通もある。原稿は進まない。ついでに年賀状もまだ書き終わっていない……。もう二月なのに……。

 焦りを自分の胸に留めておくこともできず、ついツイッターに「これこれこういう状況で、情けなさがすごい」と投稿をしてしまいました。あまり整理されていないつらみをSNSに放流しない方がよい、とやや落ち込んだりもしたのですが、少しして、「餅井さんは旧正月でやりましょう。今日から一年始まるから大丈夫ですよ」とリプライをくれた人がいました。ちょうどその日は、二月の五日だったのです。布団に突っ伏して、そのフレーズをひとしきり噛みしめました。その日はちょっと明るい気持ちで夜ご飯を食べ、まずはメールを一通返しました。次の日は二通返信して、原稿も少しですが進めることができました。よかった、また私の一年が始まってきたみたいだ。

 一年という単位は過ぎてしまえばあっという間ですが、気をしっかり保ってやっていくにはちょっと長い。周りとはペースが合わないこともある。だからいつでも好きなときに、何回でも仕切り直していい。「旧正月だから」と教えてくれた人も、そうやって一年を細切れにして、その都度その都度自分を励ましながらやってきたのでしょうか。そう考えて、嬉しいような切ないような気持ちになりました。

 しかし二月も終わりに差し掛かったいま、悲しいことに旧正月ブーストはすでに切れかかっています。けれども、あと数日で三月がやってくる。春になったぞ、と気持ちを切り替えることはできそうだし、うまくいかなくても次は四月、新年度です。それがだめなら五月の連休、今年はとても長くなりそうですが、そのあたりで持ち直しが図れるのではないでしょうか。もう今年はじゃんじゃん仕切り直していこう。口実なんて、探せばいくらでもあるんだから。

 ちなみに、年賀状はいまだに書き終わっていません。ですが出したい気持ちはまだ持ち続けているので、餅井に年賀状を送ってくれた方たち、春になって謎の挨拶のはがきなどが届いたら、そういうことなんだなと思ってください。

 もちい

餅井アンナ(もちい・あんな)

1993年宮城県生まれ。ライター。食と性、ジェンダーについての文章を中心に書いています。「wezzy」にて書評・コラムなどを執筆中。食と性のミニコミ『食に淫する』制作。

トップへ戻る