へんしん不要

へんしん不要〈第18通〉現実は自分ひとりの手に余る 

(2018/11/22)

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イラスト・題字 のむらあい

封筒_もちい

  こんにちは、もう秋も終わりがけですね。冬用のコートは出しましたか? 暖房はつけていますか? 空気が乾燥しているので、加湿器もそろそろ欲しいところです。

  私はここ最近、ずっと昼夜が逆転した生活を送っています。夜布団に入っても、体が強張ってなかなか眠るモードに入ってくれない。顔まで毛布をかぶって目を瞑っていても、頭の中がいっぱいになって悶々としてしまう。どうして眠りにつく前の静かな時間というのは、こうも不安が膨らみやすいのでしょうか。仕事のこと、お金のこと、生活のこと、将来のこと。過去の失敗や後悔について。どれも考えたところで進展のないことばかりです。

  自分はこのままで大丈夫なのか。この先どうやって暮らしていくべきなのか。何かやらなければいけないことがあるのではないか。自分はどこかで何かを間違えてきたのではないか。自分はどうしてこんな人間になってしまったのか……。こういう「自分」についての悩みや不安って、全部自分の内側に答えが求められるような気がして、一度考え始めるともう無限に内省をしてしまう。そしてドツボにはまり、眠れぬまま朝を迎える……。あーっ、もう無理。この漠然とした不安を手放したい。

  この間は耐えかねて、夜中の三時に無料の占いサイト巡りをしてしまいました。とくに占いにどハマりしているというわけでもないのですが、数ヶ月に一度、発作のように占いに頼りたくなる時期がやってくるのです。布団に包まりながら、検索に引っかかったサイトに黙々と生年月日を入力していきました。

  占いによれば、私の今年の運勢は「社会的な行動力は減退、精神的活動は旺盛となりますがそのぶん疲労が溜まりやすく、健康面もあまり良いとは言えない。ノイローゼになることがある。金運も良くなく、実りがなかったり何かと余計なお金が流れたりする」とのことです。「ノイローゼになる」って何? どんよりしすぎていませんか? しかし現状とかなり一致している。

  悔しくなって、じゃあ2019年はどうか、2020年は……と鑑定を繰り返したのですが、結局2022年あたりまで私の運勢はダメな感じでした。向こう3年くらいはノイローゼになる可能性があるそうです。でも2023年に入るとやっと調子が良くなるようで、「おいしいものが食べられる」と書いてあるのを見てちょっと安心しました。

  だけどしばらくはつらい時期が続きそうだ。みんなこんな感じなのだろうかと思い、今度は同居人の運勢を勝手に占ってみることにしました。すると今年も来年も、そのまた来年もおおむね順調とのこと。私とはずいぶん結果が違うようです。日頃の行いが良いからでしょうか。

  ですがそんな同居人の運勢も2022年ごろから陰りを見せ始め、2023年になると現在の私に匹敵する運の悪さになってきました。というか、2018年の私の結果と文面がほぼ一緒です。「ノイローゼになる」というワードも出てきました。

  なんだ、持ち回り制だったのか。私はこの結果を見てややほっとしました。日頃の行いの良し悪しではない、ただ数年おきに運勢が上を向いたり下を向いたりするだけ。最初からルールとして決まっているお掃除当番みたいなもの。だったらまあ、しょうがないですよね。

 なんで。どうして。どうしよう。自分自身にまつわる不安というのは、けっこう中毒性があるものだと思います。考えたってどうしようもないのに、考えるのがやめられない。何か悪いことが起こったり、その気配を感じたりしたときに、延々と自分の内側に原因を求めてしまう。

 そういうとき、占いを見るとちょっと気持ちが落ち着くのは、かたく握りしめた自分の物差しを、ひととき手放すことができるからだと思います。だってそういう星まわりだから、とかなんとかの巨大すぎる尺度を持ち込んで、「自分がこうであること」の責任を、少しだけ肩代わりしてくれる。

  もちろん自分の意志や行動で左右されることはたくさんあるけど、全部を全部自分のせいにしていたら、とてもじゃないけど身がもたない。この現実は自分ひとりの手に余るのです。2022年までの運勢を見ると若干暗い気持ちになるけれど(だって長くないですか?)、それもそういう時期なので仕方がない。しばらくの間は運勢の良い人に頼って暮らすことにします。

 しかし2023年の私、「おいしいものが食べられる」って、なんなんでしょうね。よくわからないけど、とりあえず楽しみです。

 餅井

餅井アンナ(もちい・あんな)

1993年宮城県生まれ。ライター。食と性、ジェンダーについての文章を中心に書いています。「wezzy」にて書評・コラムなどを執筆中。食と性のミニコミ『食に淫する』制作。

 

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