へんしん不要

へんしん不要〈第10通〉目標持ってもいいのかも 

(2018/1/9)

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イラスト・題字 のむらあい

封筒_住本

 餅井さん、あけましておめでとうございます。お正月はゆっくり休めたでしょうか。わたしは5日ほど休んだのですが、大そうじをしなくちゃというプレッシャーがつらく、かえって仕事がはじまったいまの方が楽です。結局大そうじをまだ引きずりつつ、仕事はじめになりました。

 この年末は「今年は比較的健康に過ごせたなあ」とふり返っていました。早寝早起きができるようになったし、朝ごはんも食べるようになった。運動もするようになったし、規則正しく健康に過ごすようになりました。でも、そうやって活力や体力が向上したからこそ、もっと大きな目標があったらよかったなあなんて、高望みをしてしまいます。

 そこで新しい1年に向けて目標を立ててみよう!……と思ったのですが、なかなかうまく定まりません。それはわたしがここ数年で世の中はそう簡単には変わらないということを見てしまったからかもしれません。どうせわたしが何かしたところでこの世界は変わらない、と思っている。たとえばわたしが選挙で投票した政党が第一党になることはおそらくありません。たとえばわたしのタイムラインではフェミニズムが盛り上がっても、わたしの友人のいいね欄にはアンチフェミニズムの発言がずらりと並んでいることだってあるでしょう。

 思想は個人の自由だから、それでいいんです。ただ自分が正しいと思っていることはそんなにメジャーじゃないし、そんなに簡単に社会は変わらないんだということに、思いの外面喰らってしまいました。正直ちょっとふてくされてもいる。そのままちょっと腐ってもいる。

 だから大きな目標を立てることにはいまだに抵抗があります。でも去年を振り返ればうれしいこともありました。それは目標を立てて得られるような種類のうれしさではなかったように思います。そのうれしいこととはある男友達が、
「ジェンダーがテーマのおすすめの本を教えてほしい」
と聞いてきたことです。その彼は男はこうあるべき、女はこうしてほしいということがあるほうでした。印象的だったのは、彼が「男の人は自信のあるほうがいいと思うけれど、女の人で自信がある人はちょっと苦手だな」と言ったこと。そのときわたしは何か、猛烈に主張したかった。でもわたしは逆でもいいと思うけどな、ということを控えめに主張しただけでした。そのこと自体は、いまでもどう答えるべきだったのかわかりません。

 そんな彼がジェンダー関連の本を探すにあたって、わたしを思い出してくれた。わたしは結局、彼の考えを変えようと働きかけたことはありませんでした。それはわたしの負い目でもあった。わたしは彼を説得できなかった。でも彼がなにかのきっかけでジェンダーについてもっと知るべきだと思ったときに、わたしを頼ってくれた。わたしがジェンダーやフェミニズムに興味があって、日頃いろいろ考えたり本を読んだりしているということは覚えていてくれたのでしょう。誰かの意見を無理に変えようとする必要はないのかもしれないけれど、態度をつらぬくことは自分が思っている以上に大事じゃないかと、思わぬ方向から思い知らされた出来ごとでした。こういうことがわたしはいちばんうれしい。

 その彼にはジュディス・バトラーの『ジェンダー・トラブル』という本を薦めました。わたしもこの本を読みなおしたかったので、少しずつ読みながら彼と感想を話し合ったりしています。

 これがわたしの、去年うれしかったことのひとつです。目標なんてなくてもいいのかもしれないけれど、何か態度を貫こうとした過去のわたしに意味があるのなら、もう一度目標を持ったっていいのかもしれないと思いはじめました。それは傷つくこともあるだろうしストレスのかかることかもしれないけれど、そういうことをわたしはちゃんと背負っていきたい。積み上げていきたいと思える年末年始でした。今年もどうぞ、よろしくね。
                                   住本

住本麻子(すみもと・あさこ)
1989年福岡県生まれ。フリーランスライター。文学や演劇などの文化系の記事やジェンダー関連の記事を中心に取材記事やコラム・エッセイなどを執筆している。

餅井アンナ(もちい・あんな)
1993年宮城県生まれ。ライター。食と性、ジェンダーについての文章を中心に書いています。「wezzy」にて書評・コラムなどを執筆中。食と性のミニコミ『食に淫する』制作。

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